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カテゴリ:🔗少プリ
※リュウホウ→直
※色々捏造 ※二次創作 ※リュウホウが「火をつけた真犯人である」場合 (火をつけた真犯人ではない場合の話も後日書きます) **************** 僕はスラムの片隅で生まれた。 生んだ母親は大事なものを切り捨てていく旅の中で真っ先に僕を捨てたみたいで、僕の人生はゴミ溜めから始まった。 僕は気付けば自分の命だけを持ってただ歩いていた。 「お前は捨てられたんだよ、さっさと諦めろよ」 大事な人が今ここに居ないのならはじめから居ないと思った方がいいと学んだのは幼い頃だ。 捨てられた理由も分からないのだ。いつか迎えに来るなどと思わない方がいいのは当然だった。僕を虐めて罵った人に、そのことを教えてくれたことだけは感謝してる。 もう燃やしたけれど。 小さな小さな、飲食店の屋台からこぼれた火種を見て綺麗だと思ったんだ。 それをつけた布を誰かに操られるように彼の所に持って行って、物陰から手だけにゅっと出してつけた。 誰にもばれなかった。…ばれなかったんだ。 僕のしたことはそれでも確かなニュースにはなったみたいで、寒い中火であったまろうとした孤児がうっかり死んでしまったっていう扱いになったらしい。 僕の心を満たすものがそれになるまで時間はかからなかった。 面倒を見切れない相手を何も言わずに捨てるのは当然のことで、一緒に居たいと思った相手に裏切られて諦めるのも当然のことで。 スラムは広いからいくらでもどこへでも行けたし、いくらでも燃やすことができた。 よく乾燥した日は最高に燃やしやすいから、僕はじめじめした雨が嫌いになった。 火をつけたらすぐに逃げる。火をつける場所は誰にも見られないように。もしくは近くで喧嘩を起こした誰かのせいにすりつける。タイミングの悪い日は潔く諦める。道具は大事にする。 それで何とかやっていけると思ってた。 過去形だ。 「お前だな、ここいらでものを燃やして回ってるのは」 要らないものを全て燃やしていたツケは思ったよりも早く来た。 「放火罪82件。流石にもう限界だ、お前の罪は群を抜いてる」 なんで?そこまで火をつけた覚えはない。 「ほら、さっさと歩け」 後ろで燃やした筈の誰かが笑ってる気がする。 *************** ぐしょぐしょになった囚人服をしぼる。 鍵屋崎直は、優しい。 僕のような人間に手拭いを投げてくれた。 優しいということはそれだけ恵まれているということだ。 彼に依存してしまいそうな気持を引き締めて、地を蹴ってトイレを出た。 ほのかに温かい手拭いを持って。 ************** 「僕に触らないでくれ」 どうして、こうなってしまったのか。 悲しかった、辛かった、きっとここに入る前の僕なら彼を燃やしていてしまっただろう。 それでも今はそれが出来ないことに感謝してさえいる。 彼はきっと僕を置いて進む。僕の知らない誰かと仲良くなって、生きていくんだ。 それでも僕のことは忘れないでいてくれるだろう。 寒い時に温まる火種にしてくれたっていい、僕をどうか覚えていて、飲み込んでほしいんだ。 体重をかけた手拭いは、あの時と同じで少し温かかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.04.09 06:27:50
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