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可哀想だと思った。
「ねえ、ならば、助けてよ」 おれにその体を貸してよ。 古い、古い、その神様は、人目につかない山奥のやしろに暮らしていた。 そろそろ最後まで拝んでくれていた人も死に、以後廃れ神として野に帰るのみになったとき、”彼”が訪れたのだ。 「雨宿りさせてくれてありがとうございました!」 一晩の雨宿りののち、カラッと、朝の太陽と同じ色で笑う彼に、神様は浄化された。 「ついでにと言ってはなんですが、明後日の運動会晴れにしてください!」 信仰までもらった。 だから、彼のために何でもできると思ったのだ。 「おれにその体を貸して」 彼の幼馴染の少女は人がよかった。 だから素直に貸してくれた。寂しい寂しい神様はとてもとても喜んだ。 けれど体を返すことはなかった。寂しい寂しい神様だったから、代わりのものをもっていなかったから。 少女の幼馴染はそれに憤ったけれど、全て目論見は阻止されてしまった。 そうして幼馴染は科学に頼むようになる。 あの神様を殺して、少女を再び取り戻すために。 -雨宿りした少年は、今日もそんなことは知らずに元気に楽しく少し幸運な日々を謳歌していた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.10.21 21:52:31
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