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テーマ:本日の1冊(3690)
カテゴリ:本・読書
前に読んだ『曠野の妻』『愛しい女』のようなメロドラマかと思ったが、これは傑作だ。その哀しみは『白夜を旅する人々』の底に流れる哀しみに共通するものがある。それは、自分ではどうすることも出来ない存在による人の哀しみである。『白夜を旅する人々』の入水した三浦哲郎の姉と思しき人。彼女には姉妹にある病はなかったのだが、家族に流れる血。それを自ら引き受けなければならぬ存在としての彼女の人生そのものに共通するものを『夜の哀しみ』のヒロイン登世(とよ)に感じた。 登世の淫乱は、登世が引き受けなくてはならない彼女の人生・存在であったが、それには遂に哀しみがともなった。独りではどうすることも出来なかった。と言って誰かを共犯にすることも出来なかった。やはり、哀しい。 全編その哀しみが流れている。 『愛しい女』にも『曠野の妻』にも、三浦哲郎描く哀しみは確かにある。だが、『夜の哀しみ』の哀しみの方に深い哀しみを感じた。 これで、三浦哲郎昨年から13冊になる。 夜の哀しみ(上) 三浦哲郎 平成八年三月一日 発行 新潮文庫 夜の哀しみ(下) 三浦哲郎 平成八年三月一日 発行 新潮文庫 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.01.08 21:15:13
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