９１歳、かあさんの夏

どこかにねこちゃんが

​熊にやられたと言うニュースを見ながら夫が言う。
なんで戦わへんのやと。

無理でしょ。
熊は強い。
突然やって来て襲いかかってきたら、かなうわけないでしょ
と言っても、

石を拾って、それで顔面を叩くんや
とか言う。

ムリ、ムリ！
だいたい、熊を見かけたら目を合わせたらダメ

なんでや
なんで戦わへんのや
俺は熊と戦ってみたいねん

怖いよ〜
すっごく大きな熊だよ
と言っても、

いや、一度戦ってみたい
とマジな顔で言う夫

マジそう思ってるみたい

前から思ってたけど、夫には怖いものがないみたい。

私が強盗のニュースを見て、もし家に強盗が来たら怖いから、鍵をかけ忘れないようにしないとって話したら、

なんで怖いねん
アホとちゃうか
強盗なんか来るわけない
と言う夫

田舎の家では鍵なんかいつも開けっ放しや

ここは田舎じゃないし
万が一ってあるし
と言うと

まず起こらへんことがなんで怖いねん
おかしいわ〜
と笑うので、

いや、ずっと怖がってるわけじゃないよ
万が一強盗がうちに入ったら、その時は怖いかもって話だよ
って言ったけど、

あ〜おかし
そんなもんが怖いか
と笑い続ける夫

ちょっとヘンだ、この人
前から思ってたけど
怖がってるところ見たことがない

ゴキブリが出ても、蛇が出ても、柄の悪そうな大男にからまれても、ホラー映画見ても
夫は平気

ちょっと普通じゃないかもしれない。






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