細くて長い、夏の朝の訪問者

2023.07.19

(1)

朝、小さな庭に面した窓のガラス戸を開け、その外側の雨戸を開けようとした途端、私はギャ～っと声をあげた。

そこにいたのは…

雨戸と内側のガラス戸の間の隙間に入り込んだようだ。

びっくりだーー！！
だって、こんなことは今まで一度もなかった。

ちょっと田舎に住んでる友人が、家にヘビが入り込んで大変だったわーと言うのを聞いて、
田舎は大変だな〜
うちはそんな田舎じゃなくてよかった〜
なんて思ってた。
うちはすごく都会でもないけど、近くには山も田んぼも草むらもないのだから。

私は怖くて気持ち悪くて、どうすることもできず、2階でまだ寝ていた夫を叩き起こした。

早く来て！早く！

なんやねん
と言いながら窓際まで来て…
驚いたでしょ？！

って思ったけど、田舎育ちの夫は平気な様子。
まぁ内心はわからないけど…

ほうきはどこ？
ほうきで追いやって！

でも、これ、動かないよ。
かなりスリムで長い。
雨戸とガラス戸の隙間にうまく挟まり込んで、寝ていたのか、出口わからなくなっちゃってるのか。

まいったな〜
夫がほうきで押しやるようにしたけど、入って来た隙間は小さいし、どこかに引っ掛かった？

とにかく気持ち悪すぎるよ。
頼むから出てってよー

でも、怖いけど、気持ち悪くて寒気するけど…
細くてそんなに大きくなくて、ほんの少し、かわいいような気もする。

あ、出口わかったかな？
ほうきで追い立てられ、そろりそろりと小さな雨戸の隙間から出てってくれた。

よかった〜

いったい、どういう種類のヘビ？
マムシではなさそう。

かあさんが、帰って来たんちゃうか？
とか言い出す夫。
かあさんの化身？

最近、かあさんが家に残した物を処分してる。
捨てまくってるし、かあさん怒って出てきたか？

何で捨てるんや〜って？

だってかあさん、何でもかんでも押入れや、物置に詰め込んで残してる。
古い物も、ゴミも、もう捨てても捨てても、どんどんゴチャゴチャと出て来て果てしない。

ほんま、さんざん世話やかしよったけど、死んでもなおこんなに世話かけよる。
と、怒りながら、愚痴こぼしながら、夫と私はガラクタを引っ張り出してた。
で今度は、かあさんの着物も…

かあさん、着物をたくさん持ってた。
息子には何一つ買ってやらずに、自分のためにはようこんだけ買い込んだな〜
とびっくりするほど。

とはいえ、売れるような高級な物はなさそう。
小柄なかあさんのサイズだから、着てくれる人もなく、かあさんの娘も、孫娘も興味を示さず。

かあさんの宝物だったけど、とにかく処分だ。
それが気にいらないのかな？

次の朝、
また同じ場所にあのヘビが来てたらどうしようって、ドキドキだった。

ねぐらにちょうどいい。
なんて思ってまた入り込んでたら…
とか思って、恐る恐る窓ガラスを開けたけど、そこにヘビはいなかった。

細くて小さ目で、なんか少しかわいくて、確かにちょっぴりかあさんみたいだった。
亡くなる少し前の…
昔より細く小さく、穏やかになって、面会に行った時、また来てな〜と言ってたかあさんを思い出す。

もしかしたら、息子に会いに来たのかも。

世話かけて悪いな。
って言いに来たのかも。

なんてね

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