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カテゴリ:数学本
「数学の遺伝子 5本の指からはじまる壮大な物語」小島寛之(日本実業出版社) この著者の著作はだいぶ読んだけど、今回のも非常に軽い語り口で、数学の魅力を伝えてくれている。第1章はN進法や素数、第2章は分数、第3章は無理数、そして最後の第4章は虚数が主役。それぞれで何が語られるのかは、これでおおよそ想像がつくんだけど・・・まあ、読んでみた。 P41 「塵劫記」の百五減算について。他の解説よりわかりやすかった。 P61 ここのb/a + d/c = (b + d)/(a + c)と「定義」しても、「りっぱな代数学が成立し、しかも現代の代数学の一翼を担うもの」なんだそうなんだが、知らなかった。誰か教えてください。「濃度計算」とか「加比の理」とかと関連するのだろうとは思うけど、「現代の代数学の一翼」ってところが知りたい。 P81 「ミクロの世界にあった『まったく同じ二つのもの』」の区別できない粒子と確率の話は、統計力学を教えている身としては・・・「使える」と思った。わかりやすい「思考実験」でした。来年の講義から利用させていただきまする・・・。 P113 基本的に「過去」に対して適用する条件付確率について。その不確実性は「未来のわからなさ」ではなく「知識の不足によるわからなさ」だと説明する部分から。「『未来』は誰にも平等であり、いわば客観的なものであるが、『知識の不足』は個人によってその度合いに差があり、そういう意味では主観的なのである。条件付確率は確率を主観的なものとして捉えることで初めて正当性が付与されることになる。」 P147 オイラー積。知らなかった。「円周率πの背後にも素数が渦巻いている」。「素因数分解の一意性」を利用してオイラー積を導出しているこのサイトがわかりやすかった。すごい。Python使って議論しているここも。 P169 「大数の法則」に関連する面白い「上級公務員試験」問題。サイコロの出た目だけ階段を上がる。階段の十分上の方にある段に着目して、その段に立ち止まる確率は? P181 カオスを生み出す「パイこね変換」。ここの説明もすごくわかりやすかった。またそことの関連でP193から議論しているランダムウォークについて。「つまり、花粉の運動がパイこね変換から生み出されるものである場合は、花粉の動きを『左』『右』とだけ捨象する限りにおいては、ランダムウォークを扱っていることと差はなく、ランダムウォークに適応できる理論しか通用しないわけだ。このように、カオスは不確実現象と区別のつかない現象を決定論から生み出すことになるのである。」 P204 カオスとベルヌーイシフトと正規数、そして無理数。ここはもう理解の限界を超えた。また今度。 P232 ガウスによる「代数学の基本定理」の証明について。ここに示されている図付きの説明はわかりやすかった。複素平面上の「回転数」はさらにこの後の議論で役に立つ。 あ~、やっぱりなんかここまできて、複素解析をもう一回勉強せねばならないと強く感じた。 P239 「イデアル数」、もうとりあえず用語のみ犬耳。 P257 虚数まで進んで、この後、量子力学、RSA暗号を破る量子コンピュータの話で締め括られ、素数の話からはじまった「壮大な物語」はフィナーレとなるのだけど、その途中で、このページで出てきた1つの電子のヤングの実験の解説は、結構分かり易かった。量子力学を教えるとき、実は避けて通っているヤングの実験の「正しい説明」の一歩手前の説明になっているかなと思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年07月22日 21時12分09秒
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