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2023年08月11日
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カテゴリ:科学本
「光る原子、波うつ電子」伏見康治(丸善)
偉大な物理学者の著書。本書は2008年1月に出版されたが、初出は伏見教授の若かりし頃、中央公論社の雑誌「図解科学」に1941年から1944年に掲載された記事がそのまま掲載されている。「はしがき」として2008年1月としてご本人が短い文章を残されているが、その数ヶ月後にお亡くなりになられている。難しい内容をわかりやすく伝える語り口が素晴らしい。特に後半は勉強になることが多かった。


P27 「2 燃える分子」から。水素と酸素が結合して水分子が得られるときの話。「これらの発熱量の原子論上の意味は何でしょうか。もし反応生成物、例えば水蒸気のこの発熱量を取り去ってやらなければ、水蒸気の温度圧力はきわめて高くなっており、その分子は猛烈な勢いで走り回っていることになります。燃える前の水素や酸素の分子はさして勢いよく走っていたわけではないのですが、でき上がった水蒸気の分子はたいへんな勢いで走っているということです。これはどう解釈すべきことでしょうか。エネルギーの保存の法則はどこまでも成り立つものと思われますから、このように表面に現れてきたエネルギーは分子の中に潜んでいたと考えなければなりません。」同じことを数式だけで示すのとこうやって説明されるのでは雲泥の差があると思う。さらに「それは化学的エネルギーとよばれるものです。しかし名前をつけても説明にはなりません。」と続く。これは次の講義で使おうと思う。


P94 「5 流れる電子」から。固体の中をイオンが流れる、という話。固体電解質ですよ。ガラスは普通電気の絶縁体だけど、ある程度高温にすると導電性を示す。それは「ソーダガラス」に含まれるナトリウムイオンが「動く」ため。で、それを確かめる実験というのがここに示されてて、電球と硝酸ナトリウムがあればできる。最終的に電球の内面に綺麗なナトリウムの「鏡」ができる。やってみたいけど・・・どうだろ。家でやったら危ないかな。


P126 「6 波うつ電子」から。「電子波の振動数」の節。電子波の波長が加速電圧に比例するという「実験事実」からp = hkが導かれること。また粒としての電子の速さを波としての「群速度」と同一視することで、E = hνが得られることが平易な語り口で書かれている。学部生相手の講義で使えそうな流れ。


P126 「7 光のつぶて」から。冒頭の「星問答」が面白い。兄弟の会話、数百光年という遠くの星が何故見えるのか、が本章の導入となる。この後出てくる「暴風と機関銃」という比喩は時代を反映しているなと思うけど、確かにわかりやすい説明になっていた。


P153 ここの兄の説明が最高。これをスラスラ言えるように努力しようっと(笑)
弟:「もっと細かい。眼に見えないほど小さい波長の振動でなければいけないのでしょう」
兄「まだいけない。鐘の眼に見える振動がだんだん細かい振動へ変わっていくのは事実だ。ところが、その振動よりさらに細かい振動があれば、それへと振動のエネルギーが乗り移っていくだろう。これがどこまでも続いたら、振動のエネルギーは底なしの奈落へ落ちるようにこの世から消えてしまうかもしれない。しかし。この破滅を救うのが物質の原子構造だ。原子構造あるがゆえにある波長より短い波長の振動は存在しない。エネルギーの堕落には行き詰りがあって、そこで食い止められる。食い止められたエネルギーは元に戻ってくる。前にも言ったように、よく吸収するものはよく輻射する、行く道があれば必ず帰る道があって、エネルギーは短い波長から長い波長の振動へと戻れるのだ。この逆行はもちろん始めに言ったエネルギーの堕落の間でも行われているのだが、こうして落ちるエネルギーと昇るエネルギーの釣り合いがついに成り立つようになり、あらゆる可能な波長の振動が、すべてエネルギーの分け前をもらっている状態になる。これが熱運動の正体だ。熱運動の状態ではどの波長の振動が特に盛んであるということはなく、全エネルギーが平等に分布されている。これがエネルギー等分法則と呼ばれるものです。」


P154 ここも(笑)「この理論の危機を救うためにプランクは短波長の、したがって高い振動数の光があっても実はないのと同じようにしてしまおうとしたのです。お金の例で済みませんが、いろいろな振動がもらっているエネルギーの分け前を、人々の財産に例えましょう。めいめいが金を稼いだり使ったりして一種の動的平衡状態になった経済社会を考えます。平均においてめいめいの財産は10円くらいであるとしましょう。この中に一人妙な男がいて、百円札でなければ稼ぎも使いもしないという習癖があるとします。この社会においてこの男が1枚の百円札をもつためには他の10人が犠牲にならなければなりません。それは公平な社会では許されませんから、このはした金を嫌う男は結局一文なしでいなければなりますまい。」


P204 「9 原子模型」から。太鼓、したがって膜の振動を使って、重ね合わせとか縮退とかを説明しているこの部分もよし。


P216 「10 原子アンテナ」から。AFMのタッピングモードの説明のときによく使う寺の釣鐘の話。楠正成の逸話と判明。P218の第7図が位相が90度ズレることの説明としてわかりやすい!使える!ただ・・・ここに第9図参照とありそれがない!なんだかとても気になる。同様に、P219あたりの高調波励振の話、非調和の場合の低調励振の話がP220の図とともにとても良い。


P222 ここの「自動振子」も同様に。がんぎ車、呼び鈴(昔のね)、ブーゲの振子など。


P227 ここからの「連成振子」の節も面白い。特に次の発言。「「そうこうしている内に、第二の振子は止まってしまって、始めの振子ばかりが振れているようになった。これでそもそもの状態になったから、またぞろ同じエネルギーのやりとりが始まるわけだな。けれども、どうしてエネルギーの移動が途中で変心を起こして、皆エネルギーが第二の振子に渡らない内に引き返すということがないのだろうか」
P232 もちろんここまでの議論は原子が出すスペクトルの話に繋がる。以下の兄弟のやり取りのように。
「ああ、電子波のうなりと光波とが共振して、振動がそっちに伝わっていくのですね。いや、電磁波も無数の振子の集まりと考えられますから、ちょうど共振する電磁波
の標準振動が励振されると考えてもよいのでしょう。逆に電磁振動が電子波のうなり振動に乗り移ってもよいわけでしょうね」
「そうです。もしその光が水素原子に降りかかってくれば、原子は光を吸収して、原子は高いエネルギーの状態へ励起されるのです」
「けれどもちょっと待ってください。さっきの連成振子の例から考えてみると、振動の強度は二つの振子の間を往復するのですから、原子が出しかかった光をもう一度食ってしまうということはありませんか」
この後の答えの部分はここには掲載しないでおきましょうか。







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最終更新日  2023年08月11日 13時20分23秒
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