カテゴリ:ある女の話:カリナ
今日の日記
(心の疲れと「おひとりさま」「サムライ・ハイスクール(最終回)」「傍聴マニア09」感想☆ ) 「ある女の話:カリナ42(マッシーとのバレンタイン2)」 行く時は、 こんな気持ちじゃなかったけど… 私は電車の中で、今日一日のことを思い出す。 うちに泊まったマッシーと、 午後から最後の走りのランニング同好会に出るために、 いつもと違ってすいた電車にドキドキしながら乗った。 マッシーと、昨夜メッセージカードをいっしょに書いた。 「どんなこと書いたの~」 「ん~、渡してから教える~」 そっかそっか。 最初に先生に伝えたいもんね。 私は頷きながら、自分もメッセージを書いた。 スギモト先生へ 今まで本当にどうもありがとうございました。 先生のお陰で楽しく走ることを知りました。 これから人生で何かあったら、 こうして何も考えずに走って行きたいです。 人生なんて大袈裟かな? そして続ける マッシーのこと、 これからもどうぞヨロシクお願いします! 娘を嫁にやるお父さんみたいだな。 いや、お母さんか? まあいいや。私はマッシーの家族なんだもん。 そう思った。 義理の愛をこめて… カリナ そう書いてハートマークをつけた。 冷たい風の中、 走り終わると少し体が温まった。 「オマエら、休みなのにワザワザ走りにくるなんて、 暇なんだな~。 まあ健全で先生としてはイイけどね。」 先生は笑いながら言った。 私たちは示し合わせて、 カバンからゴソゴソとチョコの袋を出した。 「先生、はーい!」 「お!何だよコレ~? くれるって言ってくれたら、内申上げてやったのに~!」 先生はチョコの袋を開けながら、 嬉しそうに言う。 「えー!そんなこと可能だったの?!」 「うんうん!」 先生は冗談なんだか本気なんだか、 とにかく嬉しいノリでそんなことを言っていた。 いずれにしても、もう点数を上げることなんて無理だから、 調子のイイことを言ってるんだと思った。 まず私のメッセージカードを見て、 ブッと笑って、 「ありがとなー!オマエもがんばれよ!」って言った。 「明日で最後なんだよな… じゃあ明日は奮発しなくちゃな~」 そう言いながらマッシーのメッセージカードを見た先生の顔が、 真剣になっていて、 表情が固まった気がした。 私がマッシーの顔を見ると、 マッシーの顔も真剣で、 先生の表情をジッと見ていた。 先生は顔をあげてマッシーの目を見た。 マッシーもずっと先生の目を見ていた。 二人しかいないような空気が流れて、 自分がこの冷たい風の一部になったような気がした。 それ位、二人の目の会話が自然だった。 一瞬だったのか、結構そうしてたのかわからないような、 時間が止まったような気がした。 「コレ…」 先生が言って、 「…うん。」 マッシーが頷いた。 「カリナ、帰ろう。」 「え…? あ、うん。」 「じゃあ、タッチャン、また明日~!」 「おう…」 先生はボンヤリしながら手を振った。 マッシーは、何か決心したような、 さばさばした顔をしていた。 私たちは着替えて、 学校を出ることにした。 何か聞けない空気を感じて、 私はマッシーから話すのを待った。 マッシーは門を出ると、ふーって深呼吸をした。 「やっちゃったな~。」 私はマッシーのその様子を見て、 ホッとしたような、 不安なような、 複雑な気持ちになった。 「何を?何をやっちゃったの?」 「メッセージに書いたの。 私は本気でタツヤが好きです。 子供の頃からずっと、男として好きです。 タツヤがそういう気持ちで私を見れないなら、 ちゃんと断っていいです。 時間はかかるかもしれないけど、 ちゃんと幼馴染に戻るようにします。 …って感じのこと。」 私はハァ~ってため息をついた。 ホントに直球だ。 先生は受け止めてくれるんだろうか? 私までドキドキしてきた。 「明日… 返事聞くの…?」 「うん。聞くよ~。 ダメならダメでいいって思うかどうか、 自分の気持ちも知りたいし。」 「ダメで…いいの?」 「あきらめられないかもね~。 でも、想ってるのは自由でしょう。 いつかあきらめられるかもしれないし、 卒業しちゃえば、行かなければ今みたいに会えなくなるし…。」 私は何とも言えない気持ちになった。 「強いね… 強いね、マッシー。」 「ん? ううん、強くなんか無いよ。 仕方無いじゃん、心がそう思っちゃったら。 できれば断られたら踏ん切りつけたいけどね。」 マッシーは無理だって思ってるようだった。 先生の目の中に、 何か見てしまったんだろうか…? 断られるような何かを… 私はドキドキしながら明日が早く来て欲しいと思った。 こんなソワソワした気持ち、ずっと持ってられない。 マッシーも同じかそれ以上の気持ちだと思うと、 今日もいっしょに過ごせて良かったと思った。 せめて側についててあげたい。 それとも一人でいたいだろうか? 二人で無言のまま電車に乗る。 傍から見たら変かもしれないけど、 私はマッシーの手を握った。 マッシーも私の手を握り返した。 それで、やっぱり側にいて良かったと思った。 マッシーの手は、細かく震えていた。 大事な何かを失くしてしまう恐怖に、 きっと震えていた… 大丈夫… 大丈夫だよ。 何もできないけど、 私はマッシーの手を、震えないように包み込んでいた。 前の話を読む 続きはまた明日 目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年12月14日 20時42分52秒
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