カテゴリ:ある女の話:カリナ
今日の日記(今日もグダグダと「東京DOGS」感想☆)
「ある女の話:カリナ43(マッシーとのバレンタイン3)」 翌日は冷たい雨が降っていて、 先生と待ち合わせをして、駅のロータリーで拾ってもらった。 私とマッシーは、いつもと同じように話したりしてたけど、 心の中は同じことを考えていたと思う。 先生はどんな返事をしてくれるだろう? 車の中で、先生は自分から進んで話をしていた。 もうすぐ大学生になるんだな~って。 自分が大学生の頃が懐かしいって。 懐かしいって思うような歳になったんだな~って。 そんな何気無い話を、 ポツリポツリと話してくれた。 マッシーも聞いたことがなかったみたいで、 そうだったんだ?とか、 そんなことしてたの?とか言っていた。 先生の大学の学祭は行ったみたいで、 大学生って面白そうだと思った、ってマッシーが言って笑った。 私は想像する。 中学生のマッシーと大学生の先生を。 先生が連れて行ってくれたお店はデパートの中にあって、 ちょっとオシャレな感じのイタリアンのお店で、 私はちょっと嬉しかった。 マッシーもだと思う。 「今日はお嬢さんたち二人に奮発しちゃったな。 まー、早いホワイトデーってことで。」 私達二人でうふふって笑う。 先生とマッシーとこうして過ごしてることが、何だか嬉しくて、楽しかった。 マッシーもそう思ってるとしたら… きっと、この関係を壊したくないよね… って思う。 車の中の延長で、 私達はお酒が入ってるワケでも無いのに、 陽気に笑ったり、しゃべったりした。 私は心の中で、 さり気なく二人にしてあげた方がいいんじゃないかな? って思っていた。 なので、デザート前にちょっとトイレに立とうとしたら、 マッシーもいっしょについてきてしまった。 「カリナ、二人にさせようとしてない?」 「うん。してるよ~。」 「いいんだって。変に気遣わないでよ、意識しちゃうから~。」 「でも…いいの?返事?」 「うん…。やっぱいざとなったら何だか…。 このまま曖昧でもいいような気がしてきた…。」 「うん…。」 私もマッシーを見てそう言った。 「怖いよね…。 でも、先生なら、私、変な回答しないと思うな。」 「…うん。」 二人で目を合わせると笑顔になった。 変な一体感があった。 食事が終わると、また車に乗って、 先生が私達を送ってくれることになった。 「マッシー、嫌じゃなかったら、助手席に乗って。 先生、運転手みたいで可哀想だし。 それにね、私昨日、二人のこと考えてたら眠れなくなっちゃった。 寝ちゃうかもしれない。」 私がそう言ったら、マッシーは決意したように頷いた。 そして助手席に乗った。 車の中でラジオから卒業系の音楽が聴こえてきた。 それにみんなで静かに聞き入ってると、 穏やかに、卒業していく空気が流れていて、 何かじんわりとした気持ちになった。 「この曲…いいよね。」 マッシーが言った言葉に私は目をつぶって返事をしなかった。 二人はしばらく無言になっていた。 「寝ちゃったの?」 と、先生。 「そうみたい。」 と、マッシー。 また沈黙が流れて、何か曲が流れていた。 パーソナリティが卒業のエピソードを紹介している。 「昨日の返事だけど…」 マッシーがいきなり口火を切った。 「返事、しにくい…よね?」 「ん~、あ~、まあ…ね。」 また沈黙が流れる。 「でもちゃんとこたえるよ。」 「うん。どうぞ。」 「だから、こたえるってば。」 「え…?!」 「カエデの気持ちに応えるよ。 昨日ずっと、オマエのことばっか考えてた。 オマエと会ってからの、子供の頃からのこと、ずっと。」 先生はそこで一度言葉を止めた。 マッシーは、無言でいた。 「俺は… 何度か女を好きになったことがあるけど、 どっかで、ふられても、いなくなっても、 大丈夫だったって言うか…。 それは、子供のくせにオマエが対等に話せたことがあったからだと思う… 正直、俺は、こんな子供といてホッとするなんて、 どこか異常なんじゃないかと思ってた。 子供だからホッとするんじゃないか?って言い聞かせてた。 だから…」 先生は自分の気持ちを確認するかのように、 マッシーにポツリポツリと話していた。 私は目をつぶったまま、先生の独白を聞いていた。 マッシー、 マッシーはどう思ってる? 先生、やっぱりステキな返事をしてくれてるよ。 マッシー。 「卒業したら、俺と付き合おう? 今は… その… 先生だから、マズイけど…。 あ~、なんか、こんなのマンガみたいだよな、どっかの。 しかもオマエずいぶん年下だしな!」 マッシーは、アハハって、ようやく笑った。 「ホントだね。 でも… でもさ、すごく嬉しいよ、タッチャン…。」 マッシーも言葉を確認するようにゆっくりとしゃべった。 「私、女らしく無いしさ…。見た目も…。 無理しなくてもいいから、 今までのままでいいと思ってたから。 たださ、私にとって、タッチャンはすごく大事な存在だってこと、 知ってて欲しかったんだよ…。」 「うん…。」 そのまま二人はずっと無言だった。 何か時々、ボソボソと聞こえたけど、 私がいなければキスでもしちゃうんじゃないかって空気が車に満ちていた。 自分以外の誰かが幸せになるのを見て、 こんな嬉しい気持ちになるなんて、 私の人生で初めてじゃないかと思った。 ジンワリと、温かい幸せな気持ちが広がってきて、 私は顔がニヤけそうになるのを堪えたけど、 涙は堪えられなくて、一粒か二粒、ちょっと流れてしまった。 嬉しかった。 すごく嬉しかった。 自分のことか、それ以上に、 すごく、 すごく嬉しかった。 「ミゾグチ!そろそろ着くぞ!」 先生が大きな声をワザと出して私を起こして、 私は起きたフリをする。 「あ~、寝ちゃった。 すいません、先生~!」 二人にわからないように、涙を拭いた。 ちょっと乾いていた。 マッシーは、明日私の家から帰ることになっていたので、二人で降りた。 雨はもう止んでいた。 マッシーを見る先生の目は甘かったので、 何だかこっちまで照れた。 二人で先生の車が去っていくのを手を振って見送った。 「マッシー、良かったの? 荷物持って先生と行かなくて?」 「カリナ… 起きてたでしょ?」 「ううん、起きてないよぉ~」 「あ!何その目!絶対起きてた!」 「起きてないって!」 私は笑い出して、マッシーは照れ臭そうに私をこずいた。 そして私はマッシーに抱きついた。 気付いたら、二人で泣いてた。 良かったね、良かったね、って。 私はその時、バスケの試合で優勝でもしたかのような、 すごい感動を味わってたんだ。 マッシー、 だから… だから私わかるんだよ。 私は絶対マッシーの味方だからね。 どうか、 私のこと思い出してよ、 私がいること、思い出してね。 マッシー。 前の話を読む 続きはまた明日 目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年12月15日 19時37分49秒
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