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テーマ:鉄道雑談(1540)
カテゴリ:小さな旅
湊線の片道7分間の旅の続き。折り返し待ち時間11分編。
中根駅で阿字ヶ浦行き列車を見送ったあと 闇に浮かぶ中根駅の様子を撮ろうと道路の方に行った私は 同じ列車から降りた二人連れに声をかけられました。 目的地は「終点のひとつ前」=磯崎駅とわかっていながら 途中の中根で降りてしまったこの二人。 一体なぜ田んぼの中の無人駅なんかに降りたんでしょうか。 「磯崎に行くんならまだずっと先ですけど。 那珂湊からコミュニティバスも出てるけど もう時間的になくなっちゃいますし」 (さっき降りた139列車が那珂湊発17:30のコミュニティバス最終に接続します) 「実は・・・」 男性が話し始めました。 「千葉から来てるんですけど、財布を落としちゃったんです。 それで、こっちに伯母(叔母かも?)が住んでいるので そこに行こうと思って(湊線に)乗ったんですけど 車内で運賃を見たら530円もかかるんですよ。 持ち合わせが500円しかなかったもので とりあえず足りるところまでと思って降りたんですけど・・・」 確かに勝田⇒中根は190円なので二人で380円ですね。 「ここって・・・何もないんですね・・・」 女性が呆然とした感じでつぶやきます。 そりゃ、こんなところで降りちゃったら途方にくれるでしょうね。 「それはもう、景色がいいから映画やTVのロケに来たり 写真を撮る人には有名な場所ですから・・・ でも、どうするんですか?ここじゃ警察もタクシーもないですよ? もう一つ先の那珂湊なら沿線で一番大きな駅だから 駅員さんもいるし、交番もありますけど」 一応財布を紛失したことは届けてあるとのこと。 じゃあ、紛失届けをした時に警察でお金を借りればよかったのに 気がつかなかったのかなぁ。 「それで、親戚の方に連絡はしてあるんですか? 行っても留守だったら何もなりませんよ?」 「ええ、それは昼頃電話したので」 「じゃあ、迎えに来てもらうんですか?」 「いいえ、高齢なもので迎えに来てもらうことは無理なんです」 ちょっと私も困って誰かに相談しようと 湊線応援団仲間がよく夕方になると撮影に来ているので 連絡してみることにしました。・・・が返答なし。 私が乗る予定の140列車は その時点であと5分ほどで来るはずでした。 磯崎に行くには、その列車が勝田で折り返して 阿字ヶ浦行きとしてやってくるのを待つことになります。 私が彼らに付き合って那珂湊まで行ったとしたら 那珂湊着18:10、そこから自分だけ戻るとしても 那珂湊発勝田行きは18:44で、この144列車が 私が乗車した日工前駅に止まる最終便なのです。 もし乗り損ねると、その後の列車は日工前が通過なので 金上か勝田から歩く羽目になります。 「大変あつかましいんですが、さっき見たら 中根から磯崎って350円なんで 二人分の700円をお借りできないでしょうか」 男性が口を開きました。ああ、やっぱりね。 この状況で頼れるのは私だけですもんね。 駅で事情を話して乗車賃を借りておいたらどうかと思ったのですが そんなことってできるのかどうかわからないし 駅員さんのいる那珂湊で降りるならともかく 無人駅では運転士さんが困っちゃうでしょう。 (そう言う場合のマニュアルとかってあるのかな?) 仲間からの返信はありません。 列車はそろそろ来る時間です。 こういう方法でヒトからお金を騙し取る詐欺ってあったよなぁと思いつつ 本当に困っているのだったら見捨てていってはいけないよねとも思い 困っている人を無視するよりは その人に恵んであげる方がいいと決めて千円札を差し出しました。 おそらく、この千円は戻ってこないだろうなと考えながら。 男性は「明日、連絡しますので連絡先を」と言って 鞄から何かの印刷物をごそごそ取り出して 余白に私の電話番号を書きとめました。 それでいて、自分の名前も連絡先も私には伝えません。 これはますます怪しい。 でも私が尋ねてメモしたところで 悪い人なら絶対名前も住所もデタラメ書くでしょうから 向こうが言わない限り、訊いても無駄です。 「すみません、磯崎から勝田に戻る分もお借りできませんか? もし、伯母と連絡が取れなかったときのために」 男性がダメ押しのような一言。 女性が呆れたように何か言いかけましたが 警報機が鳴り出して列車の明かりが見えました。 「私はこの列車で戻りますけど、勝田で折り返してきますから それで磯崎なり那珂湊なりに行ってください。」と言いおいて 「恵まれない人への寄付」だぁ~!って感じでもう千円出し、 合計二千円を渡して、二両編成なので乗車口まで走って 予定の列車に乗りました。 今度は3710型の二連ですから、全部ロングシートです。 空いていた一両目の運転席側に座り込むと 窓の外で、さっきの二人が1両目まで歩いてきて 私の方に向って何度も頭を下げているのが見えました。 ここまで話を引き伸ばしたのは 一応「明日午後、お電話します」という男性の言葉があったからです。 もしも本当に電話があったなら、私はこれほど細かく書かず さらっと終わらせるつもりでした。 でも、電話はありません。 もとより、お金を落としたから貸してくれと言う話を 100%信じたわけでもないですから ああ、やっぱりねって思う程度なんですが 同じようなことがあったら、どうしたらいいかなって ちょっと問題提起したかったんですね。 警察に届けるのが正しい対処なのでしょうけど ちょっと心配なのは、彼らが詐欺師かどうかより どうしてそんなことをしたのかってことなんです。 この世の中ですから、 不景気で失職して遠くの親戚を頼ってきたとか 連絡が取れなくなった親戚の様子を見に行く所だったとか いろんな可能性があると思うんです。 このネタで、違うお話を10編くらい書けるかもしれません。 一番心配なのが、お金に困って親戚を頼ってきたけど 拒絶されてそのまま心中なんてなったらどうしようってこと。 (そりゃ考えすぎだと言われそうですが・・・) もしも似たような状況なのだったら 私が渡した2千円で、少なくともその夜は コンビニのお弁当程度でも食べることができたはず。 車内で私が運転席の旋回窓を見たり 形式の「222」を撮ったりしてたので 「多分コイツはテツだから」って察して 最初から私をだまそうとして一緒に中根に降りたのだとしたら これは警察に届けておく方がいいでしょうけど 私が迎えに来た車でさっさと帰っちゃったなんてことになったら どうしてたんでしょうねぇ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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