車検の引き取りに向かうつもりだったわたしは

ほとんど着の身着のままで いつものバッグを手にし

いつものように読みかけの本を入れようとしてやめた

電車に乗っている時間は メールのやりとりでつぶれると思ったから

どうせ本など読む暇はないだろうと考え直してやめた



電車に乗る時に 今乗ったというメールを入れた

正確に言えば そんなメールを入れるつもりだった

が…　送信ボタンを押すころには

『 今 乗ったところです 』 ではなくなっていて

これだからケータイメール嫌いｗｗ なんて思いながら

今 どこにいるのか とか　どこへ向かえばいいのか とか

そんなメールのやりとりをしている自分たちのことを

なんか若い子たちみたい♪ なんて思ってしまった

というのも

わたしの学生時代には まだケータイなどなかったからだ



待ち合わせをしたのは とあるターミナルステーション

確かに わたしの家からの距離で考えれば

大きな駅の中では そこが一番近い

でも 実は その駅の周りのことを あんまり知らない

そもそも 滅多に行くこともないし

行くとしたら いつも同じ相手と同じ店で飲んでるし

いつも連れ回されてるから 道 覚えないし…



そういえば…

…　と　あることを思い出す

待ち合わせをするなら マイナーな場所の方がいいのだと…

わたしは 常々そう思っていたはずなのだ

渋谷のハチ公とか １０９の下で待ち合わせている人を見ては

いつも そんなことを考えていたはずだったのに…



混雑した場所で待ち合わせなどするべきではなかった…

そんな役に立たない後悔と反省をしながらも

とにかく なんとか会うことができた



お相手は…　といえば

赤と黒で構成された巨大な写真を背に

まるで その中の一品であるかのように立っていた