日本を今一度、洗濯いたし申し候

私の義父は貿易会社を営んでいました。生前、自身の人生を振り返って言っていたことがります。人生で最も大事なのは誠意であると。当然会社経営をする上で、利益を追求しないといけないが、その中にも相手に対して誠意を持たなければ取引先に信用されないと言っていました。私はその様な義父を尊敬しており、その考え方を息子にも伝承しております。

 今の日本の社会にこの誠意を重視している人がどれだけ居るのでしょうか。昨今、ユッケを食べて食中毒で死者が出ましたが、あの焼肉屋の社長である勘坂康弘の記者会見を見て驚きました。申し訳ないと言う気持ち、即ち食中毒で亡くなった方への申し訳なさなど、微塵も伝わってこず、それどころか開き直った様子が露骨に出ていました。ここからは私の想像ですが、この社長は恐らくはノウハウを駆使することで、薄っぺらい成功を重ねてきたのでしょう。今回の事件もその薄っぺらい成功の末に起きたことだと思います。目先の利益ばかり追求し、人の道を軽く見ていたのでしょう。こんな人に、どれだけの人が共感できますか。

　政治に目を向ければ、国民に何の誠意も持たない民主党がパフォーマンスだけで一生風靡し、政権の座についている。地震が起きても、国民の命そっちのけで、保身に奔走するだけの集団。

　私の会社にも、仕事のノウハウに長けるだけの小賢しい人が重用されるケースが少なくなくありません。損得感情だけで動き、協力する人への感謝や労いの心は無く、目上に対する敬意は欠け、目下の者を労わる心が全く無い人達が責任者をやっているケースをよく見ます。

　こういう浅ましい人達を思う一方で、私の結婚式の披露宴で、お世話になっていた大学の教授から頂いた言葉を思い出しました。それは恕と言う言葉です。孔子が人生で最も大切な物として挙げた一言です。日本語で言うところの思いやりであり、即ち誠意です。人生を歩む上で非常に深い意味を持っている言葉です。一昔前は結婚式でかならず、こう言う深い事を言われる方が必ずおられましたが、昨今の知人の結婚式では全く見ません。皆ふざけて、笑いをとるだけのドンチャン騒ぎの結婚式ばかりです。何かしら、社会全体が人の道を見失っています。と言うよりも、苦労知らずの我々若い世代がどんどん歳を取り、人の道を知る世代の人達が引退してしまったのが、実態なのだろうと思います。君子は義に喩り、小人は利に喩ると孔子は言っていますが、戦後日本は将にこの小人を大量生産してしまったのです。ここで言う義とは誠意とほぼ同じことです。私は例え損してでも、利より義を優先して生きる所存です。それが、少しでもこの日本に光明をもたらすきっかけになればと強く念じている次第です。