四ツ木の真逆な酒場に嬉々としたり憤慨したり
四ツ木に以前から行きたいたいと思っていたお店がありました。そう思い、先般思い立って行ってはみたのですが、道に迷った挙句にそのお店に辿り着いてみると丁度店を閉めたばかりだったようです。途中寄り道などしていなければ、こんなに日を置かずに訪れることもなかったはずです。しかしまあこれまた先般の酒場放浪記で四ツ木のお店が紹介されたので、これを絡めて行ってみるのも悪くないと少々というか仕事を終えてからではかなり面倒なこの町を目指すことにしたのでした。 最初のお店を酒場と書かなかったのは、そこが正確には酒場ではなく、ならば酒屋で呑ませるいわゆる角打ちと呼ぶのが適当かというと酒も取り扱う食料品店の色彩が強いようです。店に入ってすぐの冷蔵庫には佃煮などに混じって、鮪の刺身も並んでいます。店の主らしき姉妹のどちらかに奥で呑めるって聞いたんですがと問うと大丈夫よと指差した先には、長テーブルが置かれ、おっちゃん二人が呑んでいます。とりあえず荷物を起きつつ椅子に腰を下ろすと、酒は自分で取りに行くんだよ、お姉さんが喜ぶからねと、よそ者にもすぐに打ち解けてくれるのが気楽でいい。テーブルには乾き物のおつまみなんかもあるけれど、腹が猛烈に減っているから冷蔵庫でも眺めてみようかと再び立ち上がります。大量のカップ麺がワゴンに積まれていてこれもいいなあとレジを見ると、弁当や惣菜の売れ残りが置かれています。300円のチャーハン弁当に視線が釘付けになります。飯だってぼくには肴として十分です。それが冷めて強くなりパラパラしていたら酒がさぞ進む事でしょう。進み過ぎて便所に行きたくなった。柱の貼り紙には、当店には便所はなく徒歩二分の公園のトイレを使ってくださいとの事。おっちゃんの一人は会社に戻って用を足していました。店名を確認がてら行ってみるかと席を立ちます。おおそうだ、「せきや商店」と言いましたね。辺りは真っ暗で写真ではほとんど読み取れない。そんな暗すぎる夜道を歩き、神社を回り込んだ先の公園の公衆便所をお借りします。戻ってくるとさっきまで簡単だと言っていたのに、分かり難いんだよななんて、危うく漏らしてしまうところでした。辺りは住宅ばかりで暗いのですが、店の中だけはお気楽で愉快な空気が満ちています。楽しかったです。 酒場放浪記で紹介された「天ぷら 星乃」に移動します。こちらは打って変わって小奇麗で品の良さそうなお店です。この二軒をハシゴするとは乱暴な話です。さて、カウンター席の端が空いていたので、そこに座らせてもらいます。品書きを眺めて、酎ハイと野菜天ぷら盛合せ1,200円を頼みます。普通の天ぷらは1,500円なので、ケチってしまいました。お通しはカニの茶碗蒸し、うんちゃんと美味しいかな。カウンター席は5席ばかりで奥に段差を付けた座敷もあります。こういう立体的な造りは楽しいですね。すると若い女性の一人客が入店してきました。カボスサワーを薄めで頼み、お任せを頼むなんて思い切りと金回りのいい方だなあと感心しながら横目で眺めます。そこで知らぬ存ぜぬを決め込めれば良かったのですが、彼女は天ぷら盛合せを頼んでしまいついつい比較してしまいます。横目で観察した結果、ぼくの皿にはヤングコーンがあったけれど、彼女にはなさそうです。同じ玉ねぎと思っていたのが実は彼女の皿のは蓮根だったみたい、ぼくも蓮根が良かったなあ、なんて冷静を装って語っていますが、彼女にはえび天ぷら3本も添えられているではないか。300円でえび3本の差はあまりにも無体ではなかろうか。知っていればぼくだってそちらを選んだに違いない。せめてこの日の盛合せを明記しておくべきではなかろうか。悔しい、ものすごく悔しい、店の方に此奴はセコイと見抜かれたに違いない。納得はいかぬけれど、お勘定を済ませて店を出るのですが、やはり高いなあ、あのお通しで600円はないよなとせめて訪れる店の順番が逆であれば良かったと後悔するのでした。