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カテゴリ:葛飾区
亀有の真価は駅から離れれば離れる程に見出だせることは、この所の散策により徐々に明らかになりつつありますが、だからといって毎夜のように亀有に赴いてほっつき歩いていられる程に時間を持て余しているわけでもないのだ。なかなか信じてはもらえなさそうではあるけれど、これは事実なのであります。だからこそ駅近に何軒かは己が探究心を満たしてくれるような、そんな酒場を大事にキープしていたりもするのです。しかし、そこは大いなるハズレを引くという余地を多分に孕んでいる訳で、そういう訳だから初めにはかつて訪れた事もあるちょいと気の利いた酒場に立ち寄っておくことにするのでした。とはいえそこを訪れるのはもう何年振りになるだろう。色々と好ましい記憶は残っているのだけれど、今でもその好印象そのままに出迎えてくれるのだろうか。かつて訪れたことのある好ましい記憶に彩られた酒場を再び訪ねるという、そんな期待と不安を携えて店に急ぐのでありました。 酒場というのはそうも使えるということであって、実体は食堂そのものの「常盤仙食堂(食堂 常盤仙)」に急いだのであります。さっきも書きましたがここに来るのは随分とご無沙汰振りなのです。こんなに整然としたお店だったか。まあそれはいいのだけれと、何より気になるのはお母さんの冷ややかな応対なのであります。ぼくの記憶に残るこちらのお母さんは、朗らかでとにかく親切だったという事に尽きるのであります。店を出る時にはクーポン券だったか、ポイントチケットだったか失念したけれど、また来てくださいねなんて数年、黙殺して見過ごしてきたような冷淡極まりない不義理な客の事を見抜いていたに違いないのにそれでも暖かく迎えてくれたのです。それは記憶違いなどではないはずだ。この間、何事か辛い出来事でもあったのか、それともそもそもが別人でしかないのか、それは確認できませんでした。そこまでの事情に踏み入るのは常連にのみ許された行為であって、行きずりのぼくなどにそれに干渉する権利などそもそも有りはしないのです。とにかく以前感じたような爛漫たる明るさはなく、沈鬱な空気が場を支配しています。まあ、食堂なんて施設は手っ取り早く飯を食えさえすればそれでもう立派に役目を果たしているようなものです。余計なサービスは必ずや値段に跳ね返ってくるものなのだから、必要最低限のサービスで安価な価格というのは、これはこれで、いやこれこそ庶民にとっては一番のサービスと思うのです。その点このお店は酒の肴が余計な位にに用意されているし、それはそれで有難いのだけれど、逆に迷ってしまいスマートなオーダーの妨げになるからご一考頂いても宜しいかと。 さて、気を取り直してもう一軒。常磐線の線路に並行して通る路地は、亀有きっての呑み屋通りを成しており、今でこそ数を減らしたけれどポン引きなども多く、迂闊に店を物色などしていると、旦那さん、いい娘おりまっせとしつこくアプローチされたりしたものです。「母さんの味 かれんだあ」はそんな通りの一軒で、入ったことがなさそうという、ただその一点の理由でお邪魔することを決めたのでした。そんな環境にある店なのである程度までは覚悟を決めていたけれどやはりかなりスナック寄りのお店のようです。ただし、幸いなことに歌い手さんはまだ参上なさっていなかったようです。しっかりしていて気のいい感じのママさんと店を実質的に切り回すキビキビした動作が印象的な娘さんような年頃の方がやっていて、さっきまでの沈鬱さが一掃されました。ただ、それだけ語るとそれ以上に付け足す言葉は何もないというまあ至って有り触れた盛り場に紛れたお店なのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018/07/12 08:30:15 AM
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