中国高速鉄道、世界一の営業路線長、世界一の鉄道負債 120兆円、300兆円
中国では高速列車(新幹線)のサービスが2007年4月、中国国鉄(現・中国鉄路)によるCRH型車両導入により開始された。 中国鉄路によると、2021年時点で営業中の鉄道網の総延長は約15万kmで、そのうち約4万kmが高速鉄道。世界一の高速鉄道網だ。 中国鉄路は最終的には国内の人口50万以上の都市を全てHSRで結ぶ計画となっており、2035年までに総延長7万kmを目指している。 高速鉄道網は習金平主席が掲げる「一帯一路」の要。 高速鉄道の負債と「一帯一路」に伴い投資された多額の海外債務の焦げ付きが、中国経済の時限爆弾となると指摘されている。 2008年の世界金融危機(リーマンショック)後の世界的景気後退に際して、内需拡大のための4兆元の公共投資策の一環で2010年代には世界の高速鉄道の距離の3分の2も占める世界最長の高速鉄道網が建設されることとなった。 2011年7月1日のダイヤ改正に伴い、中国鉄道部は、高速鉄道の最高速度を350km/hから300km/hに引き下げる方針を表明した。理由については「より安全性が増す」「運賃を安く抑えられる」「エネルギー効率の向上」を最高速度引き下げの理由とした。 稼ぎ頭の京滬高速鉄道については、営業運転での最高速度は380km/hになるとも言われていたが、300km/hと250km/hの列車を運行し、2種類の運賃を設定すると発表した。また、ビジネス需要を旅客機から移すため、顧客にとって手頃な一般座席を増やし、手頃な値段で利用できるようにし需要悪大をはかろうとした。 新設路線の多くが交通需要のない人工希薄な地域間を結んでること、ゼロコロナ政策などにより、中国・高速鉄道は、2023年時点でかつてドル箱路線とされた北京から上海を最速4時間28分で結ぶ京滬高速鉄道を含む全路線が赤字となっている。 運営を司る中国国家鉄路集団有限公司の2018年9月時点の負債総額は、5兆2,800億元(約86兆円)に達していると推計された。 中国高速鉄道の光と影、莫大な中国鉄道の負債一帯一路は成功するのか政策提言委員・元公安調査庁金沢事務所長 藤谷昌敏日本戦略研究フォーラム … (略) … 莫大な負債を抱える中国の高速鉄道、盗用された新幹線技術 2018年末までで、時速250キロ以上で走る中国の高速鉄道網は、29,000kmを超えた。中国初の長距離高速鉄道は、2009年に広州と武漢で開業し、1,100kmを3時間で結んだ。このうち黒字路線は北京~上海間など1,318kmに過ぎないが、2030年には日本の約14倍に上る45,000kmにする計画を立てている。 北京交通大学の趙堅教授は「2018年9月時点で中国の鉄道の負債総額は5兆2,800億元(約86兆円)もある。この原因は、地方幹部が任期中に鉄道建設で経済成長を達成しようとして、債務返済を考えない無定見な投資をしたことにある」と地方の誘致合戦が赤字の要因だと強調する。さらに趙堅教授は、「2015年、中国全体の高速鉄道の平均輸送密度は1,700万人/km前後であったが、輸送密度が最高の“京滬”路線(4,800万人/km)でさえも、世界最高の輸送密度9,000万人/kmを誇る日本の東海道新幹線には遥かに及ばない。これは500kmの路線上に日本の人口の55%が集中していること、4,000km以上の都市交通が東海道新幹線に乗客を供給していることに起因している。日本の高速鉄道の平均輸送密度は3,400万人/kmであり、これは中国の高速鉄道の2倍である」として、中国の高速鉄道は、既に「灰色のサイ」(将来大きな問題を引き起こす可能性が高いにもかかわらず、現時点で軽視されがちな潜在的リスク)となっていると断言している。 2019年12月期の売上高を見れば、1兆1,348億元(約17兆円)で最終損益は25億元の黒字だったが、2020年に入ると新型コロナウィルスの影響で、1~3月期は大きく落ち込んだ。最終的には613億元の赤字で、累積した負債総額は、19年末時点で5兆4,859億元に上る。債務膨張の最大の要因は、コロナによる経済損失と地方の景気退潮が著しいのにもかかわらず、景気下支えのため、地方の鉄道建設に資金を投入し続けたことにある。 … (略) … 一帯一路の屋台骨とされる中国高速鉄道 習近平が推進している「一帯一路」戦略の成否は、中国高速鉄道の外国、特にアジアでの成功いかんにかかっている。中国政府は、習近平が自ら主導したトップセールスにより、インドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマー、パキスタン、ロシアなどの国と鉄道輸出に関する合意にたどり着いた。しかし、その後、タイ、ベネズエラ、メキシコなどで相次いで建設計画が白紙撤回され、マレーシアでは大幅な譲歩を余儀なくされた。 ― 引用終わり ― 中国の人口は2021年をピークに減少に転じている。今後は高齢化と労働人口の減少が始まる。 2022年、中国鉄路はゼロコロナ政策で低迷する景気底上げを目指す政府の意向をくみ、2035年に路線を現在より7割増やす方針を掲げている。 無軌道な拡大で不採算路線が増え、2022年7月時点で負債総額は120兆円の大台に達した。今後さらに70兆円超の建設費がかかるとみられている。 2022年12月期の中国鉄路の最終損益は695億元(約1兆3800億円)の赤字となり、21年12月期(498億元の赤字)から悪化した。売上高は0.4%減の1兆1272億元だった。2023年は約2500km延長され、人工希薄な南西部・雲南省の「秘境」にも到達する見込み。 高速鉄道路線誘致で中央政府の得点を稼ごうとした地方政府と合わせて負債総額は300兆円という試算もある。 最も稼ぎのいい高速鉄道も赤字転落中国国鉄集団の負債123兆円―中国メディア2022年9月7日 Record China 中国メディアの第一財経はこのほど、「最も稼ぎのいい高速鉄道も赤字転落、国鉄集団の負債総額6兆元(約123兆円)突破」とする記事を掲載した。 記事によると、中国の国有鉄道会社である中国国家鉄路集団(国鉄集団)が発表した2022年1~6月期決算は、売上高が前年同期比271億元(約5579億円)減の4857億元(約9兆9953億円)、純損失は前年同期の507億元(約1兆433億円)から804億元(約1兆6543億円)に膨張した。 22年6月末時点の負債総額は前年同期比3.45%増の6兆元、資産負債比率は66.81%。 国鉄集団は、負債総額が増加した主因は「鉄道固定資産投資が高水準を保ったため」とし、純損失の主因については「新型コロナが各地で散発的に流行したことが、鉄道輸送経営に比較的大きな影響を及ぼし、旅客輸送と多元的経営が特に深刻だった」としている。 1~6月期の貨物輸送の売上高は2344億元(約4兆8241億円)で前年同期比9.6%の増加だったが、旅客輸送の売上高は前年同期比38.3%減の965億元(約1兆9860億円)と落ち込んだ。 旅客輸送路線のうち「中国で最も稼ぎのいい高速鉄道」とも呼ばれる北京と上海を結ぶ高速鉄道の運営会社である京滬高速鉄路は、22年1~6月期は10億2800万元(約211億円)の赤字となった。今年4~6月期は20年1月の株式公開以来、四半期ベースで初めて赤字に転落した。1~6月期の自社運行の列車「本線車」の旅客輸送人員は前年同期比66.7%減少し、他社が運行を担当して地方の路線から乗り入れる直通列車「跨線車」の運営距離は同41.5%減少した。(翻訳・編集/柳川) ― 引用終わり ― 高速鉄道の赤字の主な要因は5つ 1.高速鉄道の建設は先行投資であり、コスト回収の見通しが立ちにくい。 地方政府は債務返済能力を考慮せず、政治的実績としてメガプロジェクトを建設する。2.高速鉄道の拡大は一般的に利用者の増加を見込むが、中国の人口は減少している。3.高速鉄道の運営コストや維持費が物価と比較して高額。4.中国政府の政策により、中国の高速鉄道の運賃はコストよりも低く設定されている。3と合わせ構造的な赤字要因。5.腐敗や汚職。高速鉄道は中国で最も深刻な腐敗の一つとされています。 腐敗による資金の浪費や不正な取引が建設コストと維持費の高さの一因となっている。 中国「国家鉄路」、上半期の赤字1兆6000億円超に新型コロナの流行拡大で旅客輸送人員4割減2022/09/13 東洋経済ONLINE 中国の国有鉄道である中国国家鉄路集団(国家鉄路)は8月31日、2022年1~6月期の半期決算を発表した。売上高は4857億元(約9兆7659億円)と前年同期比5.3%減少。純損益は804億元(約1兆6166億円)に上る莫大な赤字に陥り、損失額は前年同期の507億元(約1兆194億円)より6割近く増加した。 赤字拡大の要因は、言うまでもなく新型コロナウイルスの流行の影響だ。2020年に新型コロナの流行が始まって以降、国家鉄路は2020年の通期決算で555億元(約1兆1159億円)、2021年同498億元(約1兆13億円)の赤字を計上した。 ― 引用終わり ―