音楽言葉でお話
「アメリカ人のドラマーの友達から電話があって、ブルーノートでのライブに誘われたんだけど、一緒に行かない?」そんな嬉しいお誘いをいただき、soul survivorsのライブを見てきました。メンバーは、Cornell Dupree(g),Les McCann(key,vo),Buddy Williams(ds),Ronnie Cuber(sax),Jerry Jemmott(b) ギタリストのコーネル・デュプリーは63歳だし、70歳のレス・マッキャンなんて、「生きてたんだ、、、」という声があちらこちらから聞こえてくるほどのおじいちゃんバンド。スリルや切れはないけれど、おじいちゃん同士の高度なテクニックに支えられた会話を聞いているような時間だった。自分の黄金期から比べれば、衰えを自覚しないわけはない自らの演奏に卑屈になることなどなく、彼らは当たり前に音楽を演奏し、楽しんでいた。レスは、心臓を患い、今や指先の感覚がないのだという。でも彼は、"Now I got third hand. Eyes!"と語ったと言う。これまでは鍵を見て演奏していなかったのだろう。でも、今は、目が第3の手となって演奏できると言うのだ。そうは言ってもリハビリにはかなりの時間とエネルギーを要したらしい。彼らは、なくなってしまったものではなく、今あるものを使って、楽しんでいた。そんなおじいちゃんのplayを支えていたのが、リズム隊だ。バディのドラムは、素晴しかった。音のきれいなドラムとは、こういうドラムのことを言うのだと思った。美しい。レスのソロになると、バディは足りないビートを補ってあげていた。打楽器と弦楽器の要素を持つピアノの音だが、指先の感覚を失ったレスには、その打楽器の要素は使えない。そこを、バディのドラムが完全にフォローしている。ロバータ・フラックなどのバックもつとめていたバディは、ボーカリストにとても信頼されているという。その理由がよくわかった。演奏が終わった後、バディは自分でドラムセットを片付けていた。ローディーはいるけれど、彼は必ず毎回自分で片づけをするらしい。2nd SETが終わり、客もまばらになった客席で、スタッフにあれこれ大声で指示しているバディは、ドラマーと言うよりもむしろ、バンドのチーフマネージャーのようだった。いろんなところに目も気も配る、とてもsmartな人。私たちのテーブルへやってきた彼は、久保田利信さんのツアーに同行しているという、NYのvocalistを紹介し、自らの近況を口癖の"crazy"を交えて早口でしゃべりながらも、自分のドラムセットが運ばれてゆくのもちらちら見ては、「なぜこんなに女の子が働くのか?」と、心配していた。今度初めてブロードウェイ・ミュージカルをやること、その指揮者は大学時代の友人であること、母の日のお花の手配は、NYの空港で済ませてきたこと、週に6日は働いているcrazyスケジュールのこと、日本のあと行く予定だった中国への思いなどをべらべら大きな声で喋って、「明日は7時半に大阪へ向けて出発なんだ」と嘆きながら帰っていった。そしてレスは、私のことを気にってくれたらしく、「君は映画に出たほうがいい」とか、「僕を置いていかないでおくれ」「君の望むことならなんでもしよう」「君と一緒にいられたならば1日に5000回のキスを送ろう」など、甘すぎる台詞を言い続け、手に何度もキスをした。あらためて。レスは、ウエスト周り180cmくらいの70歳です。って、こんなことで締めくくろうと思ったんじゃないんだわ。えっとえっと。バディのドラマーとしての姿勢や音がbeautifulでsmartでrespectfulで、音楽を一生続けていくんだなあ、という自分の姿が見えた時間でした。今日も幸せ。