その人は、すわっているのか。
今日の午後は、VOICEトレーニングでした。レッスン自体は1時間なのですが、前後に1時間半ずつ予習と復習をするので、結局4-5時間スタジオにいることになります。今日は、BLACK COFFEEというスタンダードを歌いました。私にとっては、たぶん初めてのブルースです。知人がライブで時々歌うのを聴きながら、いつか自分でも歌ってみたいなと思っていた曲なのですが、やっと楽譜が手に入りました。深い孤独を抱えながら、恋人を家で待っている深い深い夜の曲です。あまりブルースのマインドが自分には性格的に備わっていないため、これまでブルースを歌いたいと思うことはほとんどなかったのですが、この曲は、なぜだか耳にするたびに絵がとてもリアルに浮かんでくるのです。タバコのヤニで少し光る、こげ茶色のフローリングにドア。古いアパートの3階の部屋で、少しがたいのいい女が、タバコをくゆらしながら、壊れかけた椅子に座って、待つ。ぼーっと、味もわからないコーヒーを飲みながら、待つ。投げやりになりながらも、可能性を信じて待つ。時の経過とともに、濃くよどんでゆくまずそうなコーヒー。私の中に浮かぶそんな絵を具現化すべく、初めて歌ってみたBLACK COFFEE。歌い終わりを待つことなく、先生は・・・笑い始めました。いつもそうなのです。いつも、笑われるのですっ!それは、たとえるならば、一生懸命やるほどに、間違った方向へ行ってしまう人が、かわいくて、おかしい感じなのだそうです。で、今回の笑いの理由は、、、「あこちゃん、顎が梅干になってるよ。」女性の低い倍音あふれる声に憧れのある私は、サラ・ヴォーンのBLACK COFFEEを聴きながら、低い声をどうやらがんばって作っていました。その無理具合が、力の入ったあごに皺となって現れていたというわけ。私だったら、もう来ないかもしれない恋人を待ちながらも、悲しみに一晩耽り続けることはないなぁ、、、心のどこかで、そんな自分を俯瞰で見ながら、「う。この気持ち。歌詞になる!」とか思って、きっとメモをとってしまう。そんな冷静さをもつ私は、BLACK COFFEEをもっと、虚無感あふれる、だけどどこか冷静な感じで歌うことにしました。主人公は、最初にイメージしていたよりも、少し細身で身なりも美しく、アパートというよりは、小さな洋館に住む人になりました。でも、その日によって、主人公を座らせてみたり、いっぱい歩かせちゃったり、若くしたり、でっぷりした中年女性にしちゃったり。同じ曲でも、そんないろんなことができちゃうから、やっぱり歌は面白いのです。