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2006.04.15
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ぼくのメジャースプーン
辻村深月『ぼくのメジャースプーン』
~講談社ノベルス、2006年~

 『冷たい校舎の時は止まる』で、第31回メフィスト賞作家としてデビューした辻村さんの、第四作です。いつものように、内容紹介と感想を(内容はつっこんで書いています)。

 二年前-小学二年生の頃、「ぼく」は自分の「力」を知る。言葉によって、相手を「呪う」力。母親には、それを決して使わないように言われていた「ぼく」だが、四年生になったある日起こった事件をきっかけに、その「力」を使おうと決意する。
 賢くて、優しいふみちゃん。同級生の彼女を、「ぼく」は慕っていた。彼女はうさぎが好きで、四年生になってうさぎの当番をするのをずっと楽しみにしていたのだった。
 いつも早く教室に行き、クラスの子が当番をできないときには、いつも自分でするふみちゃん。その朝は、「ぼく」が具合を悪くし、当番に行けなくなった。かわりに早く学校に向かったふみちゃんは、うさぎ殺しの犯人と、ばらばらにされたうさぎたちの第一発見者となる。
 その日から、他人の言葉に反応を示さなくなったふみちゃん。ふみちゃんをそんな風にした犯人を許せず、ぼくは「力」を使って犯人に近づこうと試みる。
 母親は、同じ「力」を使える親戚のもとで、勉強するように「ぼく」に言った。ここで「力」について勉強しておくことも、決して無駄ではないと。
 犯人と会って話すまで、一週間。「ぼく」は、「先生」-秋山先生のもとで、多くのことを勉強する。

 前作『凍りのくじら』で、数日ひきずるくらいに心を揺さぶられたのですが、本作でも、うさぎたちの状態や、ふみちゃんがうさぎたちを抱えて先生たちに「助けてあげてください」というシーンでは、相当ゆさぶられました。その後も、とりわけ復讐について考えるあたりになると、もやもやと考えてしまいました。
 主人公が十歳の男の子のせいもあるのでしょうが、「説話」のように感じながら読みました。「ぼく」や秋山先生が使える「力」をめぐって、
・生き物の尊厳(どの程度の虫までなら殺せるか、しばらく飼っていた動物を食べられるか、人間以外の動物に「気持ち」はあるのか、などなど)、
・復讐のありかた(復讐は復讐を引き起こすということ、許せないほどのひどいことを受けたにも関わらず、それを忘れようとすること、復讐して何を得られるのかということ、などなど)…、
とにかくいろんなテーマについて、秋山先生は「ぼく」に考えさせます。四六時中考えつづけていたら、生きるのがしんどくなってしまうようなテーマ(これは私の主観です)について、これでもかと考えさせられるのです。
 そして、それらについて、いくつかの考え方も示されます。もちろん、正解はないでしょう。紹介された考え方を読みながら、またあらためて考えさせられます。
 つねづね考えていたことも、ストレートに描かれていました。人間は他人のために涙を流すことはできない。たとえば、誰かが死んでしまったとしても、それは相手を失ってしまった自分がかわいそうだから、人は涙するのだと。ただ、それはそれとしても、そう思えるだけの相手がいる、ということは、その相手のことを思っていることになるのでしょう。すごく安心する言葉でした。
 とまれ。こうしたメッセージ性の方に心が奪われ、「仕掛け」には(違和感を感じながらも)気づきませんでしたが、いわゆるミステリ的な要素はどうだっていいのだと思います。
 いろいろと考えるきっかけになりました。
   *
 秋山先生は、『子どもたちは夜と遊ぶ』に登場されている先生ですね。中盤まで気づかなかった自分が恥ずかしかったです。本作で、前作では描かれなかった言葉がわかったのですが、やはり秋山先生の言葉は、描かれない部分もありました。





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Last updated  2007.09.24 07:53:14
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