カテゴリ:本の感想(た行の作家)
筒井康隆『笑うな』 ~新潮文庫、1980年~ 34編のショートショートが収録されています。先日生協で古本50円セールをしていて買ったのですが、ショートショートは眠る前にいくつか読めるのでよいですね。 印象深かった作品をいくつか紹介しましょう。 表題作「笑うな」は、タイムマシンを作ったという友人とともに、そのタイムマシンで友人がその話をおれにした場面に戻るという話。面白く読んでいたのですが、タイトルのせいもあるのか、笑いがときとして怖いものでもあるせいか、読後感がそんなによくはなかったです。それにしても、なぜこのタイトルを本の表題に選んだのでしょう。 裏表紙にも紹介がありますが、「傷ついたのは誰の心」も印象的でした。帰宅すると、妻が警官に乱暴(?)されていた、という話ですが、「傷ついたのは誰の心」なのかというタイトルがすごくしっくりくる作品です。ですます調で語られているのも印象的ですね。 それから、「ある罪悪感」。上司の課長に不満を抱いていた係長は、あるとき総務部部長にその不満をぶちまけます。そうして話が進んでいくのですが、節目節目で係長は奇妙な癖に襲われてしまうんですね。これも、「ある罪悪感」というタイトルが深みを出しているように感じました。 「駝鳥」という話も印象的です。旅人が駝鳥と旅をしているのですが、旅人は食料が尽きてくると少しずつ駝鳥を食べます。しかし駝鳥は最後まで着いてくる、というお話でした。重たいラストですね。 と、割と読後感のよくない話が多いわけですが、この中で心温まったのが「座敷ぼっこ」というお話です。女子高校生の中にまぎれこんだ座敷ぼっこと先生のやりとりが中心ですが、このラストは感動的でした。 というんで、全体的に面白かったです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.11.08 17:32:47
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