カテゴリ:本の感想(た行の作家)
筒井康隆『おれに関する噂』
~新潮文庫、1978年初版(1988年26刷)~ 筒井さんの短編集です。ショートショート一編も含め、全部で11の作品が収録されています。印象に残った話について、感想を書いていきます。 冒頭に収録されたショートショート「蝶」。好きなタイプのお話でした。蝶を拾ってきた少年と、その両親のやりとりです。 その次に、表題作の「おれに関する噂」が収録されています。テレビを観ていたら、とつぜんアナウンサーが「おれ」のことをしゃべり出す。さらに、新聞の記事でも、ラジオでも、「おれ」に関する情報が流される…。こちらも好きな作品です。筒井さんの作品には、割とマスコミ(さらに、マスコミに踊らされる人々)への強い風刺がうかがえますが、この作品からもそんな印象を受けました。こちらは、マスコミ批判というよりも、マスコミの情報の受け手への風刺が強いのかな、と感じながら読みました。 「幸福の限界」は、いやぁな気分にさせられる作品ですが、それでも好きな話です。自分も含めて、家族が、自分が満たされていることに幸福を抱くことを不快に思う主人公。主人公の月給も上がり、週休三日制が他の会社にも普及してきた頃、主人公の家族は海に出かけます。しかし、ものすごい混雑で…。不気味な描写もありますが、それも含めて印象的で、考えさせられる作品だと思います。 最後に収録された「心臓に悪い」も面白かったです。心臓病を抱えている主人公が離島に転勤させられるのですが、一緒に連れてきた不仲な妻は、夫の薬を宅配便で送っていました。さらに、いつまで経っても薬は届かずに…。軽くネタバレかもしれないので、文字色を反転させておきますが、本末転倒の滑稽さを感じさせられる話でした。小栗左多里さんの『ダーリンは外国人』の、「ジョークの考察」の話を連想しました。 と、今回は4つの作品のみの感想を書きましたが、どれも面白く読みました。上に書いた他ですと、アパートに住む人々に過剰な倹約をすすめる男と、彼に従う人々を描いた「YAH!」という話も印象的でした。 通勤と帰宅の電車の中で、楽しく読みました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.08.23 07:04:43
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