カテゴリ:本の感想(た行の作家)
筒井康隆『革命のふたつの夜』
~角川文庫、1974年~ 8編の短編が収録された短編集です。それぞれについて簡単にコメントを。 「母子像」私は、七ヶ月になる子どものために白いサルの玩具を買った。ところが、そのサルによって、妻と赤ん坊が消える空間にひきずりこまれてしまう。 ホラーテイストです。視覚的には、怖い絵になると思うのですが、一方では、あるいは美しい幻想的な絵にもなりそうな、そんな印象の物語でした。 「くさり」猫を飼っても、ことごとくいなくなってしまう。それも、月曜日と決まっている。新しい猫だけはいなくならないように気をつけた私だが、やはり猫はいなくなった。父がしている実験と関わりがあるのか…。私は、衝撃的な事実を知ることになる。 こちらもホラーでした。変な言い方ですが、とても順当なホラーというか。30年以上前に発表された作品ですが、古さを感じません。 「となり組文芸」これは面白かったです。町内の同人誌で人気作家になった人物と、その同人誌を主宰しながら人気がない人物の果たし合いとでもいいますか。楽しく読める話でした。 「巷談アポロ芸者」アポロの打ち上げを報道するテレビ番組にひっぱりだこになるSF作家の話です。どたばたですね。 「コレラ」最初数頁読んで、読むのをやめかけたのですが、いやな描写をとばしたら、なんとか読めました。東京中にコレラが拡大し、多くの人が死んでしまう話なのですが、なんともいやな気分(うわぁ…という)になりました。といって、それはえげつない描写もしっかりしているからそうなのであって、話自体は面白かったです。ラストも深かったです。 「泣き語り性教育」あれなタイトルで話もあれですが、笑えました。性教育の授業を激しく動揺しながら行う校長先生に女子中学生たちが立ち向かう(?)のですが、学生運動のノリで批判するのにかなり笑えました。しょうもないといえばしょうもないのですが…。 「深夜の万国博」万国博の深夜ルポを依頼されたSF作家の俺と、浮気相手の女性、話をもちかけた編集者の3人は、深夜の取材を申し込むものの、かたくなに拒まれる。何も責任をもたないという担当者から無理に許可をとった3人は、驚くべき事態に巻き込まれることになる。 こちらもなかなか面白かったです。編集者のキャラが面白いです。 「革命のふたつの夜」大学紛争が展開されている大学の教授である村田のもとに、運動家の女子学生が一時の救いを求めにやってきた。そこから、俺の未来に二つの道ができる。 大学運動の熱い時代のことにあまり詳しくないので、時代背景を踏まえた楽しみは味わえなかったかと思いますが、興味深く読みました。 ーーー 「母子像」「くさり」の2編が、特に印象に残っています。 (2008年1月8日読了)
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Last updated
2008.01.10 06:29:27
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