カテゴリ:本の感想(た行の作家)
高田崇史『QED 諏訪の神霊』 ~講談社ノベルス、2008年~ 毎年1月はQEDシリーズの新刊というのが定着していますね。というんで、今回は、諏訪大社にまつわる謎と、関連して起こる殺人事件の解明です。 諏訪大社について、いくつもの謎があるのですが、メインは二つあります。一つは、「御柱祭」。もう一つは、「御頭祭」です。 前者は、諏訪大社の上社2社、下社2社に、それぞれ4本ずつの柱をご神体として立てるという祭りなのですが、その過程では、決まった山で樅の木を16本切り、ひきずり、(上社の方では)木落坂では一気に転がり落とし、川で清め…という道をたどります。これらの過程にも謎があります。 そして、「御頭祭」では、75匹の鹿の頭を並べたり、その他動物を供物として捧げるような祭りなのですが、これはあまりにも血なまぐさいのではないか。といった、謎が指摘されます。 不勉強ながら、これらの祭りについてははじめて知ったのですが、興味深い祭りがあることを示し、そこにはこれこれの謎があり、ということを示してくれるところがとても親切で、それらの謎に魅力を感じて読み進めました。 一方、事件の方は、連続殺人事件が起こります。たとえば、最初の被害者は、近所の人の家の庭で殺されており、その遺体のまわりには大量に塩がまかれ、さらに遺体には松の枝が刺されている、という奇妙な状況で発見されます。さらに現場近くには、串差しにされた白兎の死体があるのでした。 その後の事件でも、奇妙な状況があります。 殺人事件の方自体にはそれほどの魅力を感じなかったのですが(不謹慎な文章になってしまいましたが)、諏訪大社にまつわる謎の解明は見事でした。 QEDシリーズを読むたびに思うのは、歴史を勉強する上での、考えることの重要さ。私はまだまだ知ることの方にウェイトをおいてしまっているので(それはそれで視野が広がり、豊かになると思っていますが)、それらの知識を駆使しながら、なんらかの問題設定をたてて解明していきたいものです。まだまだです…。 今回は、前作『QED~flumen~九段坂の春』に登場した鴨志田さんが登場します。桑原さんと棚旗さんについても、かなり露骨なツッコミがまわりから入るようになっていますが、はたして桑原さんは何を思っているのか、気になりますね。 棚旗さんがホワイト薬局につとめはじめて、この事件で7年になるそうです。なんだか感慨がありますね(今年は、高田さんのデビュー10周年だそうです)。 (2008年1月20日)
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.01.21 20:37:11
コメント(0) | コメントを書く
[本の感想(た行の作家)] カテゴリの最新記事
|
|