カテゴリ:本の感想(た行の作家)
筒井康隆『虚航船団』 ~新潮文庫、1992年~ 圧倒的なスケールの長編です。 いつものような内容紹介は書きにくいので、つらつらと書いていきます。 本作は三章から構成されます。 第1章は、船団の文房具船の乗員たちの紹介と、任務遂行への旅立ちを描きます。コンパス、ナンバリング、糊、などなど…。全員が自分のことを思い悩んでいたり、変な振る舞いがあったり、地の文の言葉を借りれば「気が狂って」います。それでもどんどん愛着がわいていくのが楽しいですね。 第2章は、ある星に流刑にされたイタチたちの歴史を描きます。以前読んでいた『言語姦覚』の中に「プライベート世界史」という章があるのですが、まさにそこで触れられている部分です。『言語姦覚』を読んだ時点で、筒井さんが描く世界史というのが気になっていたので、今回読めて良かったです。 …と、いきなり脱線してしまいましたが、おおよそ、西洋史を中心とした世界史の古代から現在までの2000年間を、1000年間に凝縮したような内容になっています。明らかにパロディのような部分もありますが、それも含めて楽しく、興味深く読みました。冒頭で「圧倒的なスケール」と書きましたが、この世界史がその理由の一つです。 そして、第3章。メタ・フィクションの世界に突入します。文房具とイタチたちとの戦い、筒井さんの思いなどが、混じり合いながら描かれていきます。 第3章はとりわけ不思議な印象が強いですが、ラストでは泣けてきました。 (2009/01/12読了)
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Last updated
2009.01.17 15:32:03
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