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2009.04.12
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筒井康隆『ヘル』
~文春文庫、2007年~

 2003年に発表された、筒井さんの短めの長編です。
 いつものような内容紹介と感想を書きにくいので、つらつらと思ったことをメモしておきます。

 まず思ったのは、最近読んだ「邪眼鳥」(『邪眼鳥』所収)に雰囲気が似ている、ということでした。雰囲気、というのは、読点の少ない文体や、作中での独特の時間の流れのことです。
 本作の舞台は、タイトル通り「ヘル」です。巻末の対談などでも書かれていますが、それは一般にイメージされる地獄というのとは違っています。そこは、現世の状態にとても近く、生者の夢にもつながっています。またそこでは、同じ人物が多様な時間・空間に偏在することもできるようです。誰が決めたのか、一定のルールもあります。
 戦時中に、朝礼台の上でふざけて遊んでいた3人の少年が、本作の中心となる人々で、その周辺の人々も活躍(?)します。多くの視点が入り乱れていて、なんとも不思議な感じですが、視点(その節の主要人物)が変わるところには空行が置かれているので、それほど混乱はしません。

 文庫巻末の広告欄で、本作には「待望のドタバタ筒井ワールド全開」とキャッチコピーが付されていますが、初期作品のドタバタとはずいぶん雰囲気が違っています。ただ同時に思ったのは、夢に似ているのかな、ということ。つまり、夢を見ている間はものすごく気持ち悪いのに、起きてみると、その夢を思い出してもなぜそんなに気持ち悪かったのか、怖かったのか分からない、むしろ笑えるようにも思えてくる、あんな感じなのかな、と。
 本作の文体や登場人物の台詞は、初期のドタバタ作品とは違って、ストレートに笑えるものではありませんでした。けれど、状況が変われば…たとえば、本作の中のエピソードを誰かに紹介するようなことをすれば、独特の気持ち悪さは薄れるかもしれません。
 勉強不足の身で、筒井さんの作品と夢の関連について書くのはおこがましいので深入りはしませんが、いまつらつらと書いたこの感覚が、本作のもつ効果なのかな、と思います。

 上でもふれた「邪眼鳥」同様、私には難しい作品でした。

(2009/04/11読了)





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Last updated  2009.04.12 07:32:59
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