カテゴリ:本の感想(か行の作家)
加納朋子『レインレイン・ボウ』 ~集英社、2003年~ 『月曜日は水玉模様』の続編にあたる連作短編集です。タイトルが示すとおり、7つの短編からなり、全体で一本の筋がとおる構成です。 ごく簡単な内容紹介と感想を。 ーーー 「サマー・オレンジ・ピール」ソフトボール部で一緒だった友人、牧知寿子が死んだという知らせを受けた。渡辺美久は、彼女のお通夜で部のメンバーと再会し、そのなかで、とつぜん泣き出してしまう。本当の涙の意味は、きっと誰にも分からない…。 「スカーレット・ルージュ」出版社に勤める小原陽子は、自他共に認める気が強い女性だった。そんな彼女が、どうにも調子の狂う作家と出会い、友人・知寿子の死について話したところ、作家は思わぬ推理を展開し…。 「ひよこ色の天使」保育園につとめる佳寿美が受け持っている園児の一人が行方不明になった。別の園児の言葉を聞いているうちに、佳寿美には嫌な想像が浮かんでしまうが…。 「緑の森の夜鳴き鳥」看護師の井上緑が、屋上で気づかず涙してしまったとき、大学生である患者が声をかけてきた。無視して去ったそのときから、患者の態度ががらりと変わってしまう。彼は何を抱えているのか…。 「紫の雲路」姉の結婚式に参加した坂田りえは、二次会で不審な男と言葉を交わす。花嫁側の客でも、花婿側の客でもないようだった。後日、佳寿美と話しているうちに、りえは男の正体についてある考えを抱き…。 「雨上がりの藍の色」三好由美子は、誰も行きたがらない会社の社食の管理栄養士を引き受けることとなった。その社食では、社長の親族で口うるさいという噂のおばちゃんたちがいるというのだが…。案の定、一筋縄ではいかなかったが、由美子はそこで思いがけない出会いをする。 「青い空と小鳥」片桐陶子の会社に電話をかけてきた長瀬里穂は、しかしすぐに電話を切ってしまった。知寿子と最も仲が良かった―というか、完全に依存していた里穂が、失踪したという連絡を、彼女の母親から受けた後のことだった。陶子はソフトボール部のメンバーたちに、里穂についての情報を求めるが…。 ーーー タイトルで、あらためてrainbowは「雨の弓」なんだなぁ、ととりとめのないことを思いました。ちなみにフランス語で虹はarc-en-ciel(空の弓)(あのバンドは虹という意味ですね)。さらにちなみに、「虹」はどういう語源なのかと『漢語林』を引いてみると、虫が蛇の意味、工がつらぬくという意味で、天空をつらぬく蛇、とのこと。言葉って面白いですね。 さて、本作では、『月曜日は水玉模様』の主人公、片桐陶子さんはちょっと第一線をひいて、彼女の部活動のメンバーたちにスポットライトが当てられます。当然ですが、それぞれがいろんな性格で、いろんなことを抱えていて…。人物描写がとても丁寧です。 前作でもタッグを組んだ萩さんもとても素敵で、二人の今後の行方も気になります。 少し悲しくもありますが、素敵な物語です。 最後に、一節を引用しておきます。 「色んな色が虹みたいに重なり合って、複雑な模様を作っているからこそ、人間って面白いんじゃないですか」 萩さん、素敵です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.12.15 11:34:53
コメント(0) | コメントを書く
[本の感想(か行の作家)] カテゴリの最新記事
|
|