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2015.09.26
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石弘之『歴史を変えた火山噴火―自然災害の環境史―』
~刀水書房、2012年~


 刀水書房の「世界史の鏡」シリーズの1冊です。
 著者の石先生は、東京大学大学院教授、北海道大学大学院教授などを勤めていらっしゃるようです。私の手元には、
・石弘之『地球環境報告』岩波新書、1988年
 があります。かつて学生の頃、一般教養の関係で読んだのでした…懐かしい…。
 さて、本書は、世界史の中の有名な火山噴火をとりあげ、その影響などを論じる1冊です。
 本書の構成は次のとおりです。

―――
まえがき
第一章 火山噴火と人類
第二章 「火山の冬」と気候変動
第三章 火山噴火が衣類を発明した
第四章 九州南部の縄文文化を崩壊させた鬼界カルデラ
第五章 文明を崩壊させたサントリーニ島火山
第六章 タイムカプセルのヴェスヴィオ火山
第七章 西暦535年に何が起きたのか
第八章 夏がこなかった年
第九章 史上最大級の噴火―自然の回復
第一〇章 二〇世紀の火山噴火
終章 悪夢の時限爆弾
あとがき

参照文献・図版出典
過去の主な火山噴火
本書に登場する主な火山
―――

 興味深かった点をいくつかメモしておきます。

 第二章からはたとえば、14世紀にヨーロッパを襲った大飢饉―ペストがそれに追い打ちをかけます―の原因には、火山噴火による異常気象が原因だったという説があるそうです。火山噴火による噴出物に含まれる細かな粉塵やガス―それらはエアロゾルと総称されます―が、大気中に漂って太陽光線を遮ることにより寒冷化が生じます。この現象が「火山の冬」と呼ばれるそうですが、大飢饉の原因はそれではないか、というのですね。

 第三章はタイトルから気になりますよね。そもそも人類が衣服を着始めたのはいつ頃なのか。この疑問に答える興味深い説が紹介されます。それは、シラミの進化から、衣服の登場時期を割だそうという説です。シラミにはいろんな種類がありますが、コロモジラミというシラミが登場した頃が、衣類の登場と一致するのではないか、というのですね。そしてその時期は、7万年前頃なのですが、実はその頃に、インドネシアはスマトラ島北部にあるトバ火山が、史上最大級の噴火をしていた、という興味深い指摘がなされます。火山噴火による寒冷化により、人類は衣服を必要としたのではないか、という仮説が成り立ちうる、ということになります。

 第八章からは、1783年の浅間山噴火に関するエピソードが興味深かったです。火口から北に15キロの鎌原村という場所では、高速の火砕流などに一瞬にのみ込まれ、人口の約八割が亡くなったそうです。そして、興味深いのはその再建方法です。復興は個々の家で行うのではなく、共同体として進めることで一致し、生存者は従来の身分格式を全て放棄し、親を亡くした子と子を亡くした親を養子縁組させるなど、欠けた家族を補い合う方法で再編が進められたそうです。

 最後に一点。1991年の雲仙普賢岳の噴火です。このとき、マスコミの過剰な(無謀な)取材により被害が拡大したということが指摘されています。避難勧告地域にとどまった報道陣を連れ戻そうとした消防・警察の方々が、突然発生した火砕流に巻き込まれてしまった、というのですね。……なんともいえない気持ちになります。

 内容は非常に充実しています。上に紹介した以外にも、興味深い指摘、話題が満載です。もちろん、自然災害への問題意識も、あらためて刺激されます。

 全体で200頁弱、行間もゆったりしていてとても読みやすいのも嬉しいです。良い読書体験でした。





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Last updated  2015.09.26 14:25:04
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