カテゴリ:本の感想(海外の作家)
~創元推理文庫、1982年~ (Gilbert Keith Chesterton, The Innocence of Father Brown, 1911) ブラウン神父シリーズの第一作品集です。12編の短編が収録されています。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。 ――― 「青い十字架」有名な怪盗を追う刑事のゆく先々で、二人組の神父が奇妙な出来事が起きていた。塩と砂糖を入れ替えたり、必要以上に勘定を払っては店のガラスを破ったり…。果たして二人の意図とは。
「飛ぶ星」富豪の家で寸劇が行われている中、令嬢のプレゼントとして準備されていた宝石が何者かに盗まれる。 「見えない男」娘に好意を寄せていた二人の男のうち、一人がもう一人から脅迫状を受けるようになった。そして、男はついに殺されるが、衆人環視の中、犯人らしき男は決して現場に近寄らなかった。
「サラディン公の罪」フランボウに会いたいという男を訪ねたブラウン神父とフランボウ。男の家には無数の鏡があり、奇妙な感覚におそられる。と、男に決闘を申し込む男が現れて…。 「神の鉄槌」奔放な兄と聖職につく弟がいた。兄が不倫相手の家を訪れたその朝、事件が起こる。兄が小さな金槌で、頭を粉砕されていたのだった。これほどの怪力は不倫相手の夫しかいないが、夫には完全なアリバイがあった。そもそも、他に大きな金槌がある中で、小さな金槌が選ばれたのも謎だった。 「アポロの眼」太陽を直接見てあがめるという奇妙な新興宗教団体が入ったビルで、その宗教にかぶれていた女がエレベーターから落下して死んだ。教祖はその時間、ビルの屋上で祈りを捧げており、完全なアリバイがあった。
―――
「見えない男」はあまりにも有名で、なんとなくの真相も知ってしまっていましたが、しかし語り口のうまさが抜群で、とても楽しめました。 「イズレイル・ガウの誉れ」は、城のミステリアスな状況へのわくわく感と、ガウがかつてとった行動への感動などで、お気に入りの作品のひとつです。 ブラウン神父がまさに「神父」だからこそ、犯人への糾弾ではなく、改悛を求めたり、犯人の良心に委ねるシーンが多いのもまた魅力でした。フランボウ最後の悪事の際の、ブラウン神父の語りにはぐっときます。 ぜひ続きのシリーズも読みたくなりました。素敵な読書体験でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.01.03 14:14:18
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