カテゴリ:本の感想(や・ら・わ行の作家)
~角川文庫、1978年~
横溝正史さんによるジュヴナイルものの長編。『怪獣男爵』『大迷宮』に続く、怪獣男爵シリーズでもあります。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。
――― 瀬戸内海に面する沖合の町に、おじを訪ねて滞在していた中学2年生の野々村邦夫は、嵐の夜に事件に巻き込まれることとなった。 燈台守を慕っていた邦夫だが、その夜、燈台の灯りは消え、船が難破した。難破船に乗っていて大けがをした青年を助けた邦夫は、青年から、黄金の燭台を渡され、金田一耕助に渡してほしいと依頼される。燭台には、黄金の指紋が焼き付けられていた。まもなく、青年は何者かに連れ去られてしまい、邦夫は使命を果たすために奔走することになる。 一方、一人の少女が悪漢にとらわれていた。彼女は、黄金の燭台の鍵を握る人物で…。 ―――
これは面白かったです。黄金の燭台をめぐり、様々な思惑が交差し、事件は複雑なものとなります。とりわけ、冒頭に紹介したように、本書には怪獣男爵も関係するとあって、めまぐるしい展開です。 金田一耕助さんも素敵でした。本書では、最初はさえない易者に扮して登場する金田一さんですが、トイレを探すふりをしながら敵の様子をうかがっているときの「ト、トイレはどこだ。ト、トイレは……ええい、じゃまくさい、いっそここで……」のセリフには思わず笑ってしまいました。こういうところ大好きです。その上で少女を救おうとかっこよく動くと思えば、まんまと敵の罠にはまってしまうこともあったりと、金田一さんも翻弄されています。 むしろ、ジュヴナイル作品ということもあり、主人公の邦夫さんは一貫して活躍している印象です。こちらは敵の罠にかかったかと思えば逆に敵をあざむいたりしており、金田一さんと対照的な描かれ方といえるかもしれません。
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Last updated
2019.10.23 22:53:49
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