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カテゴリ:続 ごめんね、にゃあ君
第7話
家に帰り、早速、紙袋からバッグを取り出してにゃあ実ちゃんに見せる。 「にゃあ実ちゃ~ん、にゃあ実ちゃんのお出掛けバッグですよ。可愛いでしょ。」 特に反応はない。でも慌てることはない。猫は狭いところが好きなので、放っておけばそのうち自分から入るだろう。入り口のファスナーを開け広げ、廊下の隅に置いておくと、案の定、数分後には中に入って居心地を確かめていた。 にゃあ実ちゃんも気に入ってくれたようなので、ネームタグを作ることにした。厚紙に名前と住所を書いてバッグの手提げ部分に紐で括りつける。何か物足りない。家にあった毛糸のぼんぼりを付けてみた。なかなか可愛らしい。これでバッグの準備は整った。後は出発を待つばかりだ。 帰省当日、自分の支度を済ませ、にゃあ実ちゃんの旅行の準備に取り掛かる。2時間ちょっとの距離でも、トイレが心配だ。バッグの底にトイレ用の吸収シートを敷き、ずれたりよじれたりしないように隅をテープで止めた。10月下旬といえば、ここ埼玉はまだそれほど寒くはないが、実家は標高800メートルに位置するので、紅葉真っ盛り。夜間は冷え込むこともある。フリース素材のひざ掛けを入れ、寒さに備えた。更に実家にいる間、にゃあ実ちゃんが退屈しないよう、おもちゃのネズミも入れた。あとはにゃあ実ちゃんだ。だが、さっきまで近くにいたにゃあ実ちゃんの姿が見えない。声を掛けながら探し回るが、どこにも見当たらない。そろそろ出掛ける時間だ。焦る気持ちを抑えて探し回る。部屋を一つ一つ捜索していくと、にゃあ実ちゃんは私の部屋のベッドと壁の間に隠れて息を潜めていた。 抱き上げようと手を伸ばすと、にゃあ実ちゃんは後ずさりする。猫撫で声で近付くが、真ん丸目の奥で怪しんでいる。どうも気持ちを見透かされているようだ。にらめっこしているうちにも時間は過ぎて行く。だんだんこちらも焦ってくるが、下手をして逃げられては大変だ。優しく優しくにじり寄り、最後は脇を抱き上げ、バッグまで運んだ。にゃあ実ちゃんの尻尾が入ったところで素早く入り口のファスナーをしめる。さあ、出発だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.02.02 13:17:14
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