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意外な戦史を語る~  カモメとウツボのメクルメク戦史対談

意外な戦史を語る~ カモメとウツボのメクルメク戦史対談

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2010.05.21
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カテゴリ:ソロモン海戦
(ウツボ)宇垣参謀長が黒島先任参謀に、『処分するな』の理由を訊くと、黒島先任参謀は次の様に答えた。

(カモメ)読んでみます。「比叡を放置しておけば、敵機の攻撃は比叡一艦に集中されましょう。ガダルカナル島の輸送船団は、そのあいだ、敵機の空襲からまぬがれることができます。つまり、敵機の攻撃を、すべて比叡一艦に吸収させるのです」

(ウツボ)これに対して宇垣参謀長は黙ったままだった。すると黒島先任参謀は次の様に話を続けた。

(カモメ)読んでみます。「どっちにしろ、比叡の沈没は時間の問題です。この際、戦艦一隻を失うことを、確認すべきです。沈没するまでの時間を、可能な限り、戦局に寄与させるべきが、本当ではないですか。敵が宣伝に使うとすれば、すでに写真に撮っていると思います」

(ウツボ)宇垣参謀長は「君の言うことは理屈だよ。阿部司令官や西田艦長の立場も、考えてやらんことには」と不機嫌な顔で言うと、ぷいっと横を向いた。

(カモメ)すると、山本司令長官が「先任参謀の言うことに理がある。それでは、前文のまま『処分するな』にしておこう」と、さっきの意見を、撤回したのですね。

(ウツボ)そうなんだ、撤回した。宇垣参謀長は「長官! それでは比叡がかわいそうですよ」と言って反対したが、山本司令長官の決心は変わらなかった。

(カモメ)このことについて、宇垣参謀長は、宇垣自身の戦争中の日記「戦藻録」に次の様に記していますね。

(ウツボ)読んでみよう。「三人でいろいろ話し合ったが、長官は自己の意見を翻して、そのまま、ということに決定した。おかしな雲行きとなるも、いずれにするも大事には非ず。大極は同じなり」

(カモメ)続けて読みます。「ただそこに気分の問題あり。先を見込みて恥の上塗りとならざるのたしなみ。中将たる司令官(阿部中将)の意志を汲み、長官の立場において、その責を引き受来るの心情及び、敵機に委せて機密暴露のおそれを果たすこと、なからしむる用心あることなり」

(ウツボ)「先の見えざる主張は、理屈に偏して、これらの機微の点を解し得ざるものなり。何人も、助けんことの一念において、変わることあるべからず」

(カモメ)「かかることありてのち、第十一戦隊司令官より電あり。『比叡は損傷のため、缶は四機とも使用不能、全部揚錨機室進水使用不可能、傾斜進水増加しつつあり、重ねて処分方ご配慮を乞う』。従来損傷艦の処分において、ほぼ軽率なるにあらずと思う節、なきにしもあらず」

(ウツボ)「これ、日本人の気質として、責任を負い、自らの手において処分し、これを最後まで見届けたき心理と、往々にして生存者収容艦が、早く敵機の横行海面を離脱せんと欲するの用心とに存するものと認められる。(略)」

(カモメ)「しかも、長官命として『処分するな』に対し二度の電請を乞う司令官の心理意見は、これ尊重に足るものであろう。いわんや、その心の裡にいたりては、まったく涙なきをあたわず。命ずる者は強気を可とするも、また自ら、その立場にある場合を考察せざれば、いわゆる将の命令たるにあらず」

(ウツボ)以上のように記しているのを読むと、宇垣参謀長としては、黒島先任参謀の非情、冷酷さが、腹にすえかねていた。

(カモメ)そうですね。現場の司令官がどうにも手の尽くしようがないから「処分したい」と再三言ってきている訳です。それを受けて「責任はとってやるから、適当に処分しろ」と言ってのける位の心構えがあってしかるべきだろう。理屈ばかりこねて、そういう感情の機微を、少しも分かろうとしない、と宇垣参謀長は思ったのですね。

(ウツボ)そうだね。戦艦比叡の西田艦長は総員退去の命令には応じた。西田艦長は、自沈させるため、「キングストン弁開け」と最後の命令を下した。

(カモメ)だが、西田艦長は比叡と運命を共にするといって退艦を拒否したのです。そこで阿部司令官は西田艦長に「駆逐艦雪風に来て報告すべし」と命令を出しました。

(ウツボ)それでも西田艦長が応じず、説得に長い時間が経過した。とうとう阿部司令官は、西田艦長の部下に命じて、強制的に西田艦長を退艦させた。

(カモメ)部下の士官らが、いやがる小柄な西田艦長を抱えて運んでボートに乗り移させ、阿部司令官らが待つ駆逐艦雪風に運んだのですね。西田艦長が退艦したのは、十一月十三日午後三時四十分でした。

(ウツボ)西田艦長が雪風に連れてこられた後に、雪風は魚雷を発射した。魚雷は比叡の中央部に命中した。だが、それでも比叡は沈まなかった。阿部司令官は、さらに止めを刺すように、再び魚雷の発射を命じた。

(カモメ)阿部司令官はアメリカの攻撃機が来襲する危険性を感じて、隷下の駆逐艦とともに、雪風を退避させました。後に、雪風だけが、比叡を確認するために現地に戻ってみると、すでに戦艦比叡の姿はなく、海面に重油が浮いていました。

(ウツボ)こうして戦艦比叡は沈んだ。これは、太平洋戦争中、日本帝国海軍の戦艦が沈んだ最初だった。

(カモメ)「怒りの海」(相良俊輔・光人社)によると、この西田艦長が、艦と運命をともにすることなく、退艦したことが、西田艦長のその後の運命を決定づけました。

(ウツボ)そうだね。当時の海軍大臣・嶋田繁太郎大将(海兵三二・海大一三)は、後日西田大佐を予備役に編入した。







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最終更新日  2015.08.09 22:42:36


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