テーマ:意外な戦記を語る(748)
カテゴリ:帝国陸軍と陸上自衛隊
(カモメ)「青春の小原台~防大一期の30年」(四方洋・飯島一孝・毎日新聞社・1986)によると、防衛大一期生の高級幹部の座談会で、「自衛隊を退職した後、どのような仕事をするか、その生き方を部下や後輩たちが見ている」という趣旨の発言があります。
(ウツボ)この座談会に出席した防衛大一期の高級幹部は、「戦争を知らない将軍たち」(田口いづみ・こう書房・1987)に登場する防衛大一期生の将軍たち、志摩篤陸将、源川幸夫陸将、佐久間一海将などだね。 (カモメ)一選抜で昇進してきた一期生のトップグループですね。二十六年前の、彼らがまだ現役自衛官だった頃の毎日新聞主催の座談会での話ですね。 (ウツボ)そうだね。もちろん、防衛大卒は自衛官として職業軍人の人生を終えれば、それで義務を果たしており、問題は何もないはずだね。 (カモメ)そうですね。 (ウツボ)だが、この発言は退職後、野に下って、民間でリーダーとして国家のために仕事をすることも大いに期待されているということなのだろう。 (カモメ)確かに防衛大卒業者は、中谷元(防大二四期・防衛庁長官)、田村秀昭(防大一期・参議院議員・死去)、佐藤正久(防大二七期・参議院議員)、宇都宮隆史(防大四二期・参議院議員)など政界にも実力者が多数いますね。 (ウツボ)それは、確かに前述のように、防衛大卒は自衛官として職業軍人の人生を完結する訳だが、退職年齢は、五十代半ばから六十歳くらいだ。まだ仕事はできる訳で、事実かなりの人が再就職している。政界・財界で実力を発揮している人も多い。 (カモメ)ところで、暴露本「防衛大学校~その教育の本質」(松田明・オリジン)を読むと、防衛大の学生の入学の動機が四つに分類されています。 (ウツボ)松田明氏は元防衛大教授で哲学を担当していたが、思想的に問題があるという理由で、昭和四十六年八月、防衛大を追われた。だからかなり昔の話だね。さらに、このような経歴の人が書いた本であるから、当然自衛隊や防衛大に批判的な内容となっている。 (カモメ)ああ、そうですね。それを織り込んで見なければなりませんが、一つの説として、この本に掲載されている防衛大入学動機の四類型はそれなりに説得力がありますので紹介してみます。 (ウツボ)そうだね。第一類型は、防衛大を模擬試験のつもりで受験したに過ぎないが、他の志望大学に失敗し入学するもので、入学者全体の三〇%。これは当時の松田教授の分析した数字で、以後のパーセントも同様であるが、現在はどうかわからない。 (カモメ)第二類型は、経済的事情で、学費も生活費も無料、さらに給与まで出るという好条件で勉学できるというもので二〇%。 (ウツボ)第三類型は、具体的目的を持っている者。例えば、パイロットとか船乗りにあこがれて入学する者。また理工系の技術取得や各種免許取得を目指す者など。二〇~三〇%。 (カモメ)そして第四類型が、軍人、即ち自衛官を一生の職業として一旗揚げようという、いわば武人派。武力優先的発想を持っていて、反共的意識である者。これが二〇~三〇%ですね。 (ウツボ)なお、「防衛大学校の真実」(中森鎭雄・経済界・2004年発行)にも次の様に記されている。 (カモメ)読んでみます。「自衛隊には行かなくてもいいと言う募集が常態になっている中で、入校してくる学生たちを四年間かけて一生懸命教育し、幹部自衛官になろうという気持ちを植え付けなければならない防大側は大変である」 (ウツボ)「しかし、中にはどんなに教育しても、効果がない学生もいる。かくして毎年、中途退学者、任官拒否者が出る。防大は何をやっているんだとなる」。なお、現在は任官拒否者は非常に少ないそうだ。 (カモメ)「最初から幹部自衛官を目指しているのはほんの一握り、大半は白紙の状態で入学する学生であるという現実を知らないので、批判だけになる」。 (ウツボ)だけど、防衛大入学の動機は、あくまで動機に過ぎない。その後の自衛官人生に、決定的に影響するものではない。 (カモメ)そうですね。中学生の頃から防衛大に憧れて、猛勉強して、その憧れの防衛大に合格した第四類型の人でも、途中から嫌になって退学する人もいるそうです。 (ウツボ)その反対のこともある。俺の知っている人だが、当初、私立大で電子工学を勉強していたが、あまり面白くないし金になりそうにない。それでもっと儲かる仕事はないかなと思ってパイロットをめざして、今は立派にパイロットになっている人がいる。 (カモメ)防衛大を卒業して、幹部自衛官として実力を発揮して昇進していくのは第四類型とは限らないですね。第一類型や第二類型、第三類型の人が、司令官や幕僚長になる場合も多いそうです。 (ウツボ)そうだね。例えば元航空幕僚長の田母神敏雄氏は高校時代、工学部志望だったが、父親から防衛大受験を勧められた。それまでは防衛大とはどういう大学か知らなかったということだ。高級幹部でもそういう人もいるそうだ。これは、他の専門職種の大学でも同じだろう。 (カモメ)そうですね。知人に聞いた話ですが、旧制の商船大学に落ちて海上保安大学校に入ったところ、学生があまりにも公務員的気質だったので、嫌になり結局退学したということです。 (ウツボ)海上保安大といえば、二年浪人して、これ以上は経済的に浪人できないと、万一に備えて、給料が出る海上保安大を受けていたのだが、それが受かって入学して、巡視船の船長になった人もいる。 (カモメ)防衛大でもそういう人たちがいるでしょうね。 (ウツボ)要するに動機は何であれ、入学してからの適性の問題だね。何事も。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.07.27 13:05:00
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