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意外な戦史を語る~  カモメとウツボのメクルメク戦史対談

意外な戦史を語る~ カモメとウツボのメクルメク戦史対談

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2012.10.19
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カテゴリ:戦争と文学・陸軍
(カモメ)芥川龍之介は大正十五年に発刊した随筆集「梅・馬・鶯」(新潮社)に所収されている「澄江堂雑記」の「三・将軍」の項で、この自著の小説「将軍」について、自分自身の思いを次のように記しています。

(ウツボ)読んでみよう。「官憲は僕の『将軍』という小説に、何行も抹殺を施した。ところが今日の新聞を見ると生活に窮した廃兵たちは、『隊長殿にだまされた閣下連の踏台』とか、『後顧するなと大うそつかれ』とか、種種のポスタアを下げながら、東京街頭を歩いたそうである。廃兵そのものを抹殺する事は、官憲の力にも覚束ないらしい」

(カモメ)「また官憲は今後と雖も、『○○の○○に○○の念を失はしむる』ものは、発外禁止を行うそうである。○○の念は恋愛と同様、虚偽の上に立つ事の出来るものではない。虚偽とは過去の心理であり、今は通用せぬ藩札の類である」

(ウツボ)「官憲は虚偽を強いながら、○○の念を失うなという。それは藩札をつきつけながら、金貨に換えろというのと変わりない。無邪気なのるものは官憲である」。

(カモメ)ここでは、芥川龍之介は検閲で修正された「将軍」に対して、官憲に憤りを感じているのですが、それだけ乃木将軍に対する評価は辛辣ということですね。

(ウツボ)だけど、乃木将軍は武士の血を引く、いわばサムライだ。思想、行動も、実戦を体験した軍人、サムライとしてのものだ。二〇三高地の攻撃で多数の部下を死なせた、その責任と悔しさは当然敵に対する強烈な憎しみ、敵愾心となってくる。それが机上で考え、小説を書く文学者である芥川の思想、理想と相容れないものだったということだね。

(カモメ)けれども前述しましたが、日露戦争後の乃木将軍の一般国民の評価として、良いものと悪いものがあるのですね。

(ウツボ)それは、いつの時代のどの人物でもある。ナポレオンだって、チャーチルだって、トルーマンだって、現在の民主党の野田首相だって、評価は分かれている。さて、「将軍」はこれ位にして、次に移ろう。昭和の戦争詩を少しだが、見ておきましょう。戦争詩は、世相や戦場の状況を凝縮しているので、じっくり味あうと背景が見えてくる。

(カモメ)分かりました。「戦争文学全集・別巻」(毎日新聞社)によると、詩人の北原白秋(明治十八年一月~昭和十七年十一月・熊本県生まれ・福岡県出身・芸術院会員)は、昭和十三年、ドイツ帝国のヒトラー・ユーゲント(ナチス党の青少年団体)が日本に来たときに、「万歳ヒトラー・ユーゲント」を作詞していますね。

(ウツボ)この頃は国家主義への傾倒が激しくなり、白秋も戦争詩歌を多数作っている。その中から次の三首を見てみよう。

(カモメ)「じりじりと匍匐しつつも寄り進む 兵をぞ思ふその眼力」。「戦車来る音のとどろを地に伏して 待つま澄みつつ神はあるらむ」。「ノモンハン火を噴き戦ふ国境の 上空にして夏もをはるか」。

(ウツボ)当時は斉藤茂吉(明治十五年山形県生まれ・精神科医・歌人)も戦争詩を多数発表している。その中から次の三首を見てみよう。

(カモメ)「パラシウトを皆否定して飛び立たむ 空襲部隊の礼するところ」。「おびただしき軍馬上陸のさまを見て 私の熱き涙せきあへず」。「宋美齢夫人よ汝が閨房の手管と 国際の大事とを混同するな」。

(ウツボ)昭和初期には、戦争漫画も出てきた。田河水泡(たがわ・すいほう・明治三十二年二月東京出身・日本美術学校卒・第一九師団歩兵第七三連隊に入営・漫画家・落語作家)の漫画、「のらくろ二等卒」は「少年倶楽部」昭和六年新年号から連載された。

(カモメ)野良犬の「のらくろ」が軍隊に入隊し、失敗を重ねながら、次第に模範兵士に成長していき、漫画の連載中に、一年に一階級か二階級昇進していくありさまを、ユーモアたっぷりに描いたものですね。

(ウツボ)連載が始まった昭和六年九月には満州事変が勃発した。戦争に突入した日本の世相を反映して、「のらくろ二等卒」でも猛犬部隊と山猿部隊との戦闘が頻繁に行われ、そのたびに「のらくろ」が活躍し、手柄を立てて昇進していく。

(カモメ)この「のらくろ」は二等卒から出発して大尉になるまで十一年かかっていますね。少年倶楽部が「のらくろ二等卒」の連載を打ち切ったのは昭和十六年十月号ですから。

(ウツボ)それは漫画の連載期間としての十一年だね。現実にはその期間で二等兵から大尉になるのは難しいですね。ところで、「のらくろ二等卒」の作者、田河水方泡の妻の高見沢潤子は、文芸評論家・小林秀雄の妹だね。

(カモメ)そうですね。小林秀雄は、明治三十五年四月東京出身。東京帝国大学文学部卒。明治大学教授、創元社取締役。芸術院賞・読売文学賞・野間文芸賞を受賞。芸術院会員・文化功労者となり、文化勲章・日本文学大賞を受賞しています。小林秀雄は「のらくろ二等卒」について所見を発表していますね。








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最終更新日  2015.07.23 21:44:34


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