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2009.12.30
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カテゴリ:東北
昨日も記したが、下北に突然姿を現したシカの話題に関心を抱いた。ラジオで聴いた話なのだが、地元の新聞にも随分と出たようだ。わが宮城では、イノシシが急に北上し出したというし、大崎市ではカンガルーも飛び出した。地球環境の変化、いや政権交代の異変に動物たちも気づいたのか。朝日新聞地方版の複数の記事から要点を拾う(構成と論理補正は当ジャーナル)。

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1 シカの出没

青森県で絶滅したとされるニホンジカが、下北地域の5市町村で目撃されている。始まりは08年3月、むつ市大畑町のあすなろ保育園で、保育士がカメラに収めた。4月には、大間町大間、東通村蒲野沢で別のシカが撮影された。10月には、風間浦村、佐井村、大間町などで、同一個体と見られるが春とは違うシカが出没。また、同月は八戸市にも出没し、水路に迷い込み、救出後に死亡し、焼却処分された。いずれも若いオス。

今年8月にはむつ市で2歳のオスが捕獲された。北里大獣医学部(十和田市)でDNA分析したところ、北海道のシカに近く、岩手のシカとは違うDNA配列だった。

この2年間の目撃情報は15件に上るが、下北半島北部で目撃されたシカは、八戸市などの個体よりも比較的大型のようだ。エゾシカはホンシュウジカよりもやや大きい。むつ市のシカも、DNA配列からエゾシカの可能性が高いが、解剖では消化管に寄生虫が少なく、飼育されていた疑いも捨てきれないという。

シカはどこから来たか。岩手県からホンシュウジカが北上したとの説、飼育されていたシカが逃げ出した説もあるが、北海道から海峡を泳いで渡ったとの見方もされている。

2 北海道から泳いで渡来したとの見方

北海道では、渡島半島でエゾシカ分布が拡大し、数年前からシカ猟を解禁している。特に函館市恵山周辺や知内町などで増加しているという。

温暖化によりホンシュウジカが太平洋側で分布域を広げ、北上しているという見方は理解しやすいが、北海道のエゾシカが果たして津軽海峡を泳いで渡来するだろうか。しかし、最近の目撃例こそ確認されていないものの、下北では古来、シカが海を泳ぐことが知られていた。

シカが持つ反芻胃が浮袋となって浮力を維持するらしく、また首が長い分、泳ぐには有利かも知れない。松前で山火事があったときに渡った、また、前のシカの尻に首を乗せ、交互に先頭を代えて泳ぐなど、エゾシカの渡りは今でも下北に伝えられている。「奥隅奇譚」「宇曽利百話」など古い書物にも、シカが海洋を渡る記述がある。村林源助「原始謾筆風土年表」には、1807年、「榎山(えさん)灘より渡れるや野牛海より来たりしか。砂鉄山より見たりしは鹿渡りと云える一連なるべし。初めの一匹は頭を上げ、残るは幾匹ならん。七、八丈(二十数メートル)にも見え……」とある。

三内丸山など県内の多くの縄文遺跡からシカの骨で作った釣り針が出土し、江戸時代に県内を旅した紀行家、菅江真澄は各地でシカの鳴き声を聞いている。その後、青森では明治初期のわずかな期間にシカやイノシシを絶滅させてしまった。

シカが渡島半島の西側から泳ぎ始めれば、下北半島の長い西海岸が海流を受けとめる位置にある。集落はまばらで、人知れず上陸していた可能性は否定できない。

3 岩手県から北上したとの見方

ホンシュウジカが北上したという見方に関しては、北限とされる岩手県の五葉山をすでに越え、北上高地全域に分布を拡大していると見られている。県境を接する二戸市や洋野町でも目撃例があるという。温暖化と無縁ではなかろう。かつて青森を含む東北地方に広く生息したが、明治以降の乱獲と豪雪で激減。有蹄類は脚の関節以上の積雪で、著しく活動を制限される。しかし、雪解けが早まることで死亡率は低くなった。暖冬で雪の少なくなった太平洋側をシカたちが北へ向かっているのかも知れない。同じ偶蹄目のイノシシも現在、宮城県を北進中だ。

4 飼育されたシカとの見方

かつて全国各地で養鹿場が開かれたが、下北地域には施設はなく、シカなどの動物を飼っていた観光牧場も30年前に閉鎖された。ニホンジカの寿命は長くても20年前後で、少数が世代交代を繰り返しているとも考えにくい。だが、今回のシカは、各地で写真に収められるなど、人慣れしている雰囲気もある。狩猟期間中にシカを捕獲し飼育しても、規制の対象にはならない。仮に飼育していたシカが逃げ出した場合、そのシカはホンシュウジカとは限らず、交雑も心配される。県内ではエゾシカなどを移入し、飼うケースが少なくない。

5 今後の展望

ニホンジカは青森を挟んで、北海道と岩手で数を増やしている。新天地を求めて今年も出没を繰り返すのか、それとも実は飼育されていたシカなのか。また、この三つの可能性が複合しているとも指摘されているる。

近年のDNA研究により、ニホンジカは北海道から兵庫県までの北日本グループと、以西の南日本グループに二分されることがわかってきた。ホンシュウジカとエゾシカは別亜種とされるが、ミトコンドリアDNAによる系統解析では、予想に反して、ブラキストン線の北と南で大きな違いはなかったという。遺伝学的には津軽海峡は境界ではないのだ。

さらに、DNA分析では、ニホンザルやツキノワグマも列島の南北でグループが分かれていたことが明らかになっている。哺乳類3種が、ほぼ同じ時代に分化したが、そのうちのシカだけが北海道に分布し、サルとツキノワグマはブラキストン線以南の本州にだけ生息している。シカは海峡を行き来したが、サルとクマは渡れなかったというわけだ。太古の昔、シカの祖先は果敢に海へ泳ぎ出したのかも知れない。

83年に本州最北端の大間町で捕獲され、現在展示されているシカの剥製について、皮膚の一部をPCR法でDNA検出可能な量にまで増幅し、正体の解明が試みられている。


次の焦点は雌の確認だ。シカは若いオスが単独で出没を繰り返し、その後、メスの群れが定着するという。メスが目撃されると、繁殖が懸念される。大雪と狩猟で絶滅した種の再定着という見方もできる一方で、各地でシカによる食害が拡大し、増殖のスピードに対策が追いつかないというのが実情だ。県内でもシカが増える可能性は高く、保護管理を考えるべき時代になる可能性もある。
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最終更新日  2009.12.30 01:24:05
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