ハンガーストライキ
参考記事意思統一がなされていない職場おれの派遣されている老人ホームでハンガーストライキをしている人がいる。完全に食べないというのではなく、施設の提供する食べ物には手をつけないというものだ。もともと、その人は好き嫌いが激しく、ちょっとでも嫌いな食材が入った料理には手をつけない人だった。その人が極端すぎるところもあるのだが、施設側の対応も誠意がなかったのかもしれない。今のようなハンストになるまでにはいろいろ経緯があったのだ。その人はもう1年以上施設にいる。これまでは『好き嫌いが多い人』ですんでいたのだ。嫌いなものは残すだけで、他には問題はなかった。それが、一切食事を口にしないどころか、呼んでも食堂にすら現れなくなってしまった。これがまだ来たばかりの人ならわかる。老人ホームのことを刑務所のように感じている人も多い。おれはそれを『老人ホーム危機』と呼んでいるのだが、そういう心理学的な危機はあると思うのだ。でも、その人は一年は安定した状態にあったのだ。最初の危機を乗り越えてきた人であるのだ。だから、単に老人ホームでの生活が気に入らないという問題ではないはずだ。わがままを承知で、無茶を承知でやっているのだ。いろいろ不満がたまって、それを訴えても改善されない。何の自由も認められない。というような気持ちになってしまっているのだと思うのだ。規則正しい生活はいいことなのかもしれないが、それを押し付けられるのはおれだって嫌だ。決まった時間に食事をして、決まった日に風呂に入り、決まった時間に消灯される。個室ではなく4人部屋で、隣の人のいびきとか明かりとかそういうことも気になる。持ち物も制限されて、自分の空間はカーテンで仕切れるだけだ。自分の障害のこともある。右麻痺の人が多いのだが、その場合は左脳がやられている。左脳には言語野があり、そこがやられるとどうしても言語障害がのこる。その人も右麻痺と言語障害がある。そういう障害になったときに『障害危機』にあっていて、それを乗り越えてきたはずなのだが、やはり、完全に乗り越えるにはきつい障害だと思う。言語障害があると、自分の気持ちを言葉で表現することが難しくなる。ボキャブラリーが極端に少なくなり、発音も不明瞭になる。なかなか自分の最も言いたいことをうまく伝えられなくなる。そういうストレスもあったのだろうと思う。おれの考えではその人のわがままを聞いてあげて、誠意のある対応をして欲しいと思うのだ。老人ホームの住人は他に行くところがない。嫌だといって、自分で出て行くことはできない。もともと自分で来たくて来たのではない。何か悪いことをして老人ホーム送りになったわけでもない。だから、背水の陣なのだ。そこまで追い詰めてしまったのだからこれ以上追い詰めないで欲しい。どこでもその施設の決まりごとはあると思う。でも、それを半ば強制的に連れてこられた人に押し付けたら刑務所と同じじゃないか。『みんな我慢してるんだから、あなたのやっていることはただのわがままだ』という意見もあるだろう。それは事実だろう。でも、我慢させていると取ることもできるのだ。『何で我慢しなければならないの?』って聞きたくなる。秩序や職員の都合の問題なのだろうけれど、それを正当化する根拠はない。我慢させて、あきらめさせることが施設のやり方だとするならば、前に『家畜』と書いたが、まさに利用者は施設の『家畜』じゃないか。このハンストを『困った人だ』とか軽く言う人がいる。でも、本当は軽い問題じゃないのだ。施設の全利用者の問題なのだ。利用者を怒鳴りつける職員なんかはそういう風に感じるのだろうけれども、家畜の飼育係じゃないんだからもっとよく考えてほしい。簡単なことだ、自分がその人の立場だったらと想像するだけで『なんて不自由な環境だろう』と想像できるはずなのだ。そういう発想すらない人がいるのだな。ハンストしている人がないものねだりをしていることはおれも認めるが、その人が折れる形で決着をつけてほしくない。そういう形にすることは簡単にできる。その人はカップラーメンしか食べていないのである。そのカップラーメンは施設の人に買ってきてもらったものだ。だから、もう買ってこないことにすればその人は食べるものがなくなる。そこで折れるか、死ぬまで頑張るかどちらかになる。その人だけ特別な対応をするという方法もある。それでいいのかもしれないが、それじゃあ他の利用者に対して不公平だ。他の方法としてはもっと自由な施設を紹介するというものだ。個室で風呂も食事も好きなときにできる施設もある。対応が無理ならばそういう方法もありだ。施設の形状や職員の配置によってできることとできないことがある。おれの派遣先は個別ケア向きじゃないのだ。前にも書いたとおり職員のモラルも低い。おれはその人はもっといい施設に行くべきだと思う。でも、利用者には他の施設に移る手段がないのだ。ケアマネがなんとかすべき問題なのだ。施設のあり方そのものを改善しようという発想はない。何しろ施設長が何もやる気がないのだからそういうことは期待できない。利用者を怒鳴り散らし、チャン付けで呼び、ペットのようにかわいがる職員が何の注意もされない職場なのだ。そういうのがどれくらい見苦しいのかわからないのだな。まともな人も何人もいるのだけれど、積極的によりよくしていこうという感じじゃない。おれも人のことは言えないのだが、でも、おれのような派遣と正職員では立場が違う。ただ、自由に生活したいというだけではみ出し者みたいになってしまう。利用者にはかわいそうだけれど、そういう施設だな。この件がどういう結末になるか見届けたい。本・読書ランキングです↓押してくれ!こっちはアクセス解析です。