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カテゴリ:山川草木国土悉皆成仏
京都の着物の製造現場で新たな動きが始まっています。
先ずは不況に耐えられなくなった業者の廃業が目立ってきた事です。 特に「蒸し屋」さん。 蒸し屋さんはその名の通り染料を定着する為にする「蒸し」、余った染料や糊を川で洗い流す「水元」、蝋や友禅に欠かせないゴムを落とす「揮発水洗」が主な仕事です。 工房の直ぐ近くにあった「六条蒸」という蒸し屋さんは一年程前に廃業しました。 今年は中堅の「斉藤蒸」さんが廃業する事が決まっています。 そして、今は噂の段階なんですが、京都で蒸し屋のドンと言われた蒸し屋さんが廃業すると言うのです。 技術的には傑出しているのですが、工賃が余りに高いのと責任を取らないので有名な蒸し屋さんです。 名前は出しませんが、京都の着物業界の人なら誰でも知っている名物蒸し屋さん。 染色業界はそうとなれば騒然とする事は明白。 業界のシンボルとして、潰してはいけない工場と言えるのは業界の誰もが認識しています。 業界の人間は相当ショックを受ける事でしょう。 不況と言えば、友人の呉服屋さんは年に二度の売出しをするのですが、昨年から客足がぴったりと止まってしまったそうです。 我が工房は何かとリピーターのお客様があったり、紹介して頂く事があって悪いなりに健闘していると思います。 しかし、こんな店は少ないのだそうです。 そう思うと有難いのですが、全体に活気が戻らないと有力な下職さんの廃業で出来ないものが増えてしまう事になります。 今も発表会の最中だと思いますが、何の発表会だと思いますか? インクジェットの機械です。 インクジェットの振袖に色落ち等のクレームで大変な事になっているのは聞いていましたが、技術は進んでいる様です。 今回発表されと機械は染料が酸性、反応の二種類に加えて転写のインクまで使えると言うものです。 染料インクも七色まで進化。 価格も四百万円代になってリーズナブルに。 四反を同時に染め、一反の長さが、つまり四反が三十分で染まるのだとか。 着物一反当たり、七分三十秒で染まってしまうのです。 機械の会社は東京だそうですが、発表会場は何と市立の京都市産業技術研究所。 見学に行った型屋さんは唖然としたそうです。 もう、自分の仕事が無くなるなと。 何を考えているのでしょう京都市は。 技術者、科学者は常に新しい物を開発したがります。 気持ちは理解出来ますが、伝統工芸の技術を廃らせる機械の開発に市が助力して何とするのか。 京都市産業技術研究所は数年前にはコピー機のシステムで着物を染める機械を開発しています。 とことん、伝統技術を葬るつもりなのでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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こんばんは!
衝撃です。インクジェットのプリント振り袖って・・・。なんでそんなしょ~もないもん作るんでしょうか?しかもなんで京都で発表するんでしょう?無粋を嫌う京都で!人類は物作りを絶えず続けてきた生き物なのに、人間自身が物作りを放棄したら、もう終わりだと思います。これだけの歴史をかけて創ってきた「物作り」を、ないがしろにして、人間が物作りを続けられない状況を作るなんて、無粋の極みです。虚しすぎます。(涙) (2010年02月20日 01時52分50秒)
こんにちは。
業界&地元ならではのお話、その現実に驚きつつ興味深く拝読致しました。 伝統に培われた人の手技に対して、機械の進歩を市立の団体が推進するというのは納得がいきませんね。 その辺が見直されている筈なのに・・・簡単に作れれば良いというものでは有りません。 (2010年02月20日 16時16分54秒)
初めて書き込みします。
私も染屋の端くれなんですが・・・蒸し屋さんが無くなれば個々に蒸ししなければいけなくなると考えただけでぞっとします。 インクジェットの件ですが、酸で反応させると言う事は三度黒的な反応をさせる物なんでしょうか? 普段、伝統の町とか言っている癖にどちらを向いて言っているんでしょうね。。。 (2010年02月20日 19時35分01秒)
むだかびさん、今晩は。
もう既にインクジェットの振袖が席巻しています。 問題はインクジェットで染め上げた物に「京友禅」の証書を貼ったり、染め方がインクジェットである事を表示していない事です。 インクジェットそのものは優れた発明で、それを使うなとは言えません。 知らん顔して手描友禅など手間隙掛けた作品であるかの様な顔をして売られている事に問題があります。 もう一つ、友禅の老舗が時間と金をかけた作品のコピーを大量生産する事です。 その老舗の番頭さんが三メーター位に近づかないと分からない程の出来映えだったとか。 ここまで来ると犯罪です。 (2010年02月20日 21時31分30秒)
衣舞の袖さん、今晩は。
知人である型屋さんでは、既に二台のプリンターを使っています。 得意先には内緒であったのですが、その得意先の社員がその染め上がりの癖を見抜いて、問いただして判明したとか。 今回発表された高性能で割安なプリンターが出来れば使う型屋さんも増えるでしょうね。 実際、型の摺職人さんは平均年齢が六十五歳を超えていると言われています。 風前の灯火である型友禅も、振袖と同じくインクジェットにとって変る日が近づいて来たのかも知れません。 市当局は伝統産業を保護し成長させたいと言っているのにまるで二枚舌の様です。 この政策は見直されるべきです。 (2010年02月20日 21時43分58秒)
焔さん、今晩は。
初めまして、ようこそ。 染屋さんでしたか。 お仲間ですね。 昔は大きな工場の型屋さんでは自前の蒸し箱や水元の川を持っていました。 専門の蒸し屋さんに依頼した方が安く上がるのでやらなくなった様です。 京都の蒸し屋さんは間違いなく全て赤字です。 利益が出る程上げれば仕事が来なくなるのが分かっているので上げられないのです。 基礎体力があったり、別の事業で補填出来る所だけが残っているのです。 インクの種類が酸性染料インク、反応染料インクと転写インクの三種類のインクを使い分け出来る機械だそうです。 酸性染料インクはそのまま蒸しに、反応染料インクはどうするのでしょう。 我が工房でも、綿の染に反応染料を使い出しましたが、大変手間のかかる染で、染め上がったグリーン色が空気に触れて赤くなるのです。 インクジェットの反応染料インクをどういう風に仕上げるのか興味があります。 (2010年02月20日 21時58分04秒)
京都市産業技術研究所…なにやってるとこかHP見ましたが、わかりにくいところですね。市役所の「伝統産業云々」のところを見ましたら「メール」は受け付けていない…遅れとる。苦情言わなきゃきがすみませんわ。
(2010年02月22日 00時54分57秒)
先日、街の美容室で着付けを頼みました。
そのときに聞いた話ですが、昔の振袖は、写真に撮ると映えるといってました。(写真屋さんの話だそうです) 裏を返せば、いまできの振袖は、写真うつりがよくない、ということです。 これって、もちろん柄ゆきだの、色だのもあるでしょうけど、インクジェットの振袖ということも関係してるんじゃないでしょうか。 織柄があって、つやがあって、その上にのる色彩があってハーモニーになるんであって、フラットな図柄を吹き付けるだけじゃ、同じにはなりませんよね。 そして、それしかしらない技術者、デザイナーばかりになったら、ノウハウもなくなってしまいます。 いまの時代、リアルのその瞬間よりも、むしろ記録したものをありがたがってるというのに、そのだいじな記念写真が書き割りみたいじゃ、なんのためだか。 それに世間が気づくまでに、産業がつぶれてしまってからでは取り返しがつきません。 トクなようにみえて、じつは損をしていることを、消費者が知らなければ。 (2010年02月22日 09時05分44秒)
とんぼさん、今晩は。
京都市産業技術研究所は以前、京都染織試験場と言っていました。 着物の染や織物の事故等はここへ持ち込んで原因を判定してもらっています。 他に友禅の高い技術を持った人を講師に、新米職人の育成もやってくれるのです。 実は我が息子も昨年お世話になっています。 それとは別に、新しい技術の開発は科学者としての使命だと理解されている様です。 実は京都市に意見を提出しました。 回答までは二週間以上かかると返答がありました。 掲載出来る様な内容であればこのブログで発表するつもりです。 (2010年02月22日 22時37分28秒)
Suzukaさん、今晩は。
写真は怖いものです。 掃き合わせと言う地直しの手法があります。 仕立てた時に隣同士の色が違った時に色を掛けて合わせる事です。 見た目に綺麗に直っているのですが、写真に撮ると全く違って見える事が良くあります。 本質が見えてしまう様です。 インクジェットの振袖のその本質を映し出しているのだと思います。 怖いですね。 手描とインクジェットでは、隣に本物を置くとその違いが分かるのですが、消費者相手にそんな事をする筈がありません。 CGでも、何にも無い所から振袖を作るのは並大抵の技術や時間では出来ません。 元にあった着物をコピーすればぐっと簡単に。 先生に釈迦に説法ですが。 それはそれで、この技術は今となっては破棄される事は無理な話しです。 コンピューターを使った着物は最早無くなる事は無いでしょう。 染め方さえ正直に発表していれば。 しかし、手で描き上げた質感はCGから創出する事は不可能です。 ですから、心配はしていません。 その意味で、型屋さんは消滅の危機を迎えた摺職人さんを筆頭に淘汰される事は必定に思えます。 酷い時代になって来ました。 (2010年02月22日 23時03分19秒) |