AXNミステリチャンネルで放送された「夜歩く女」を鑑賞。
テレビ朝日の「土曜ワイド劇場」1990年9月1日。サブタイトルは「呪われた結婚申し込み 首なし死体がふたつ!」で、小野寺昭さんが金田一耕助を演じたシリーズの第4作にあたります。
新潟県の山間部にある鬼首村の旧家 古神家の令嬢 八千代(南条玲子)のもとに差出人不明の気味が悪い手紙が届く。手紙には「定めにより近く汝と結婚せん」と書かれていて、首から肩にかけて赤痣がある男の、首がない裸体が写された写真が同封されていた。「定めにより」とは、古神家には代々、赤痣をもって生まれる遺伝があり、八千代に痣はないが、将来、痣がある男と夫婦になるだろうと巫女に予言されていたことである。
東京で蜂屋小市という画家が拳銃で足を撃たれる事件が起き、その被害者である蜂屋が病院から失踪、鬼首村に現れた彼は古神家に滞在する。はたして蜂屋の体には痣があった。
八千代の従兄 守衛も古神家の財産に野心を抱き、八千代を強引にわが物にしようとする。その守衛にも痣があった。
怯える八千代の身を案じた同村出身の三文小説家 屋代寅太(三浦浩一)は私立探偵の金田一耕助(小野寺昭)に相談し助けを求める。
古神家の家老筋の家柄で実権をにぎる仙谷鉄之進(内藤武敏)の息子 直紀(西岡徳馬)は屋代寅太と学友であるが、彼は「探偵の助けなんかいらん」と屋代の出過ぎた行為に怒り、金田一耕助を追い払おうとする。
その夜、金田一は暗い庭をふらふら歩いていく八千代を見かけて跡をつけていくと、そこへ屋代と直紀も来て、八千代が夢遊病であること教えられる。
翌朝、家政婦(伊藤美紀)に使われていないはずの土蔵の扉が開いていると知らされた金田一耕助が、中に入ってみると首を切断された凄惨な男の死体を発見した。
その死体には痣があり、蜂屋と守衛どちらの死体かわからなかったが、足に銃で撃たれた傷痕があることから蜂屋だと推定された。
現場にはおびただしい血だまりを踏んだ、女のものとみられる血の足跡が残されていた。
首を切断した凶器は古神家に伝わる日本刀ではないかと思った屋代と直紀は、厳重に保管されて誰も開けられないたはずの金庫を開けてみると、その刀身にべっとりと血がついていた。
横溝正史さんの「夜歩く」のテレビドラマ化作品です。
原作と大きくちがっているのは、古神八千代のキャラクターで、原作では無軌道な娘であり、殺されてしまうのだが、このドラマでは宿命に怯えるヒロイン役。演じるのは南条玲子という、ちょっと懐かしい女優さん。
そして小説では殺されて首を切断される画家 蜂屋小市と、古神守衛に共通する体の特徴はせむしだけれども、ここでは赤痣ということになっています。現代ではせむしは設定として使えないので工夫したのだろうが、見分けがつかないほどまったく同じ痣を持った人物がいて、二人はじつは双子だったという理由は、ちょっと無理があると云えば云えるのではないか。
先に見た「三つ首塔」は横溝作品とするには味気ないものでしたが、この血みどろの首なし死体というのが出てきただけで、なにか嬉しくなってワクワクしてしまった。横溝正史さんのドラマ化はこうでなくては。「顔のない死体」と「本当のターゲットを隠ぺいするための多重殺人」。ミステリらしくって面白いドラマになっているし、それに南条玲子さんも良かった。