「部下としての心得」は一生持ち続けたいものである。
松下幸之助の晩年の 22 年間、その側で仕事をしてきた著者が、その時の経験をもとに、「部下の心得」として 20箇条をあげ、その 1 つ 1 つについて解説するスタイルのビジネス書である。
印象的なのは、松下幸之助が好んで使ったとされる「社員稼業」のくだりである――「つまり雇われているとか使われていると思うのではなく、一人ひとりの社員が会社の中で一つの店を構えている、自分はその主であると考えてはどうか、ということである」(157 ページ)。自分のサラリーマン人生は、まさに「社員稼業」である。幸之助も良い言葉を残したものである。
久しぶりに落ち着いて読むことができたビジネス書である。最近は、ビジネスのスピードや事業の新規性を求められるが、戦前生まれの著者が書いた内容には趣がある。
この 20箇条については、いちいち納得できるのだが、最後の「目標を立てる」だけは守れそうにない。自分は、よく言えば日々正しいと思うことに邁進している――現実には、毎日が一杯一杯の生活が正しいことだと信じて暮らしているので、目標は立てる必要はないと思っている。これでは、ビジネスマン失格かもしれない(苦笑)。
ともかく、会社組織の中のいる限り、上司になっても上には上がいるわけで、同時に部下の立場である続ける。会社を辞めた後も、国家という組織の中での部下であり続けるわけだから、「部下としての心得」は一生持ち続けたいものである。
■メーカーサイト⇒江口克彦/PHP研究所/2003年3月 部下の哲学
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