安倍政権の狙いは?
安倍所信表明演説を各紙社説が取り上げています。新聞が安倍政権誕生に際してやや否定的な書き方をしていたのにもかかわらず、世論調査の結果は安倍支持が7割と絶望的な状況です。テレビ朝日の昨晩の「朝まで生テレビ」という番組では、政権発足時で自民と民主の支持の比が4対3なので、政治に関心の高い層では、時間が経つにつれて民主支持が高まり、来年の参議院選挙の頃には、自民と民主の支持の比が逆転すると思います。ですが、問題は、新聞も、政治欄・社会欄は読まず、スポーツ欄とテレビ欄しか読まない、それなら、スポーツ新聞でも読んでくれれば、右寄りだけれども政治についても取り上げてくれているのに、多分、それも読んでいない、もっぱらテレビのお笑いバラエティしか見ない、という若者を中心とした人たちだろうと思います。こうした人たちの判断基準が、肯定にせよ否定にせよ、テレビにどれだけ露出しているか、ということになっていて、それが、高い安倍支持率になっているように思います。「朝まで生テレビ」で田原総一朗さん、金子勝さんに対して、能ある鷹が隠していた爪、その爪がいずれ出てくるその爪とは何かと、しつこく聞いて、金子勝さん、お茶を濁してしまいましたが、安倍晋三さんは能なき鷹だと感じる私が、代わりに明言しましょう。安倍政権支持のコアな部分は戦前回帰派で、日本軍を復活し、北朝鮮に攻め込んで武力で拉致被害者を救出、竹島・北方領土も武力で奪還ということを考えている人たちだろうと思います。ですが、それだけなら、7割の支持率ということにはならないでしょう。安倍人気の高い若い世代でも、どれだけ、じゃあ自分が軍隊に入って朝鮮半島やロシアと命をかけて戦ってきます、と思っているか、疑問です。TBSラジオ「アクセス」で若い人の言っていることを聞いていても、日本も武力を持つべきだということを、あたかもテレビゲームの戦略でも立てているかのように、極めて客観的に主張するだけで、自分で泥をかぶろうと言う声は聞いたことがありません。では、安倍支持の中身は何か?お茶の間の話題を提供している皇室の世継ぎ問題ですが、私は問題が先送りされて当面決着済みだと思っています。敬宮愛子さまが成人した後くらいに再燃して大問題に発展すると思いますが、私の死んだ後のことだろうし、そのときになって問題視しても手遅れです。もしかすると、皇族を隠れ蓑して軍事独裁を狙う勢力が、タイで起きたようなクーデターを起こし、皇族の誰かを逮捕なんてことをやるかも知れません。ところが、世論調査の結果では、皇室に男子の皇位継承者が誕生してもなお、女性天皇を認める人が72%、女系天皇も認める人が65%なのだそうで、男系とすべきと主張していた安倍晋三さんの意図とは大きく異なっています。要するに、安倍支持の中身の大半は、安倍晋三がどういう人かわかっていない、笑顔がさわやかで素敵だ、くらいにしか思っていない人たちだと言うことです。読売も朝日もともに、所信表明演説が具体性に乏しいことを指摘しています。私は、実は、安倍首相、就任してもまだ方向性を定め切れていないのだろうと思っています。安倍晋三氏が創りたい美しい国とは、国民が全員同じ考えをしていて、一糸の乱れもなくピッタリ揃って行進するような美しい国でしょう。教育基本法を改悪して、おかみの言うことには一切の疑問を挟まず、お国のためならこの命も捧げます、という人たちの集合としての日本国家を作りたいのでしょう。そうした異論反論が一つも出ない国家が悲惨な破綻を迎える、ということを、昭和の時代に日本人は体験しているのですが、日本人は、飲酒運転死亡事故でも、児童虐待でも、官製談合でも、何度でも同じ失敗を繰り返すのです。「反省」ということをしないので、米国とかつて戦争をして大敗を喫したのだと言うことさえ知らない若者ばかり、というこうとでは、「あの戦争」をもう一度繰り返すのかも知れません。昨晩の「朝まで生テレビ」で、感じたことがあります。私は、福島瑞穂さんは気に入っていますが、あまり好まない社民党の女性議員が、年金制度が崩壊するような国は「美しい国」なのかと言っていました。民主党の枝野幸男さんは、安倍首相が首相補佐官を5人置いたことについて、官邸機能を強化したこと自体は評価するけれども、官僚機構と向き合う形ではうまく機能しない、と、言っていました。私も、枝野さんの言うように、うまく行かないと思うのですが、私は、安倍首相の狙いはそういうところにあるのではなく、昨年の衆議院選挙と同じ構図を作ることにあるように思っています。自民党の中で、首相補佐官側の「美しい国」派と、各省大臣を先頭とする旧来の官僚権益維持派とで、大きな論争を行っているように見せて、国民の中にも浸透しているいわゆる「リベラル」派の声をもみ潰してしまった状態で、来年の選挙を闘おう、というのが安倍首相の狙いだろうと思います。つまり、昨年、郵政民営化強行で、小泉首相がいかにも苦境に陥っているかのように演出して見せて、自民党は選挙で大勝したのです。自民同志が、郵政民営化反対論と、刺客に別れて激しくやりあっているかのように見せて、福祉の充実を訴える民主党を完全に蚊帳の外に追い出してしまうことに成功したのです。安倍首相は、これの再現を狙って、わざと、政権運営がぎくしゃく見えるように演出しようとしているのだろうと私は睨んでいます。社民党も、民主党も、どうもこのことがわかっていない、安倍路線に乗ってしまっている、という感じで非常に不安に思いました。このまま行けば、来年の参議院選挙で、昨年の衆議院選挙と同じことが繰り返されてしまいかねません。枝野幸男さんが、「朝まで生テレビ」で言っていましたが、私も、安倍晋三氏自体は支持しませんが、安倍政権が日本を取り囲む諸国の動向を踏まえて健全に国家の舵取りをすることの方を重視し、安倍晋三さんの個人的な考えを打ち出さないでいるなら、それで構わないと思います。小泉首相のように、いかなる反対論にも耳を貸さず、A級戦犯を合祀する靖国神社への参拝を強行し、外交問題としても支離滅裂な状況に日本を陥れてしまう、というようなことを始めるのなら、私は、売国奴、という罵声を浴びせるでしょう。----------------コメント、トラック・バックはこちらへお願いします。