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(昨日からの続き) 初右衛門が宴席から出てきたので、菊野と仁三郎は居住まいを正して、「ご無礼の段幾重にもお詫びします。どうぞご存分に」と二人がわびると、 初右衛門は「客を喜ばせるための遊女の戯言、いわば当座の座興だ。こちらも国元に帰れば女房子供もいる。本気にするほど野暮ではない。」と許し、出立の用意があるからと帰って行った。 二人は、ほっとして、酒を酌み交わし、仁三郎は一足先に二階の部屋に休みに行った。 菊野が一人でいると、兼ねての約束通り、仁三郎の許嫁のおすみがやってくる。菊野はもとは仁三郎の家の女中で、許嫁の手前身を引いて遊女となって、仁三郎と逢っていた。しかし、仁三郎は祝言をあげようとはせず、おすみとしても「このままでは、世間のもの笑いになってしまう。形だけでも祝言をあげてくれれば、あとは捨て置かれても我慢します。」ついては仁三郎にあわせてほしいと訴える。 菊野は仁三郎の部屋へ行って、思いのたけを打ち明けたらきっとうまく行くからと励ます。 恥ずかしがるおすみを仁三郎の部屋に行かせて、菊野が一人で横になろうとしている時に、町人姿に身を変えた初右衛門が忍びこみ、菊野の吊った蚊帳を切って落とす。驚いて逃げ出る菊野。 「あなたは初右衛門さん、これはいったいどういうことですか。」 「気持ちよく帰ったと見せかけ、お前たちに復讐に来たのだ。よくも俺をばかにしてくれたな。楽には死なせぬぞ。」 と菊野の喉を片手で締め上げ、片手の脇差を脾腹につっこむ。「仁三郎はどこだ。」ときかれるが、菊野は気丈にも「知らぬ・」と言い張る。 菊野はずたずたに切られついには首を切り落とされる。騒ぎを聞いて様子を見に来た女中や使用人たちも次々と切り殺される。 二階で騒ぎの様子を見た仁三郎とおすみは、なんとか逃げ出そうと、煙管で二階の窓枠をこじ開け、しごきをかけて降りようとするが、腰が抜けて降りることができない。仕方がないので、部屋にあった長持ちの影に身を隠す。 初右衛門はとうとう2階までやってきて、部屋中を探すが仁三郎はいない、、長持ちもこじ開けられたが中には誰もいない。そこで、初右衛門が窓枠がこじ開けられて、しごきをたらしているのをみつけ、「あいつは逃げてしまったか、残念」と家を引き上げて行った。 帰りに返り血を浴びてまっかになった身体と死体を踏んだりして血で汚れた足を、井戸の水で洗っていると、雨が降りだした(本物の水が使われている)初右衛門は謡を歌いながら悠然と歩いていくのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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