カタカナまたは英語で、ハッピーエンド(Happy End)と言えば、映画やドラマで安心できる、嬉しい終わり方。では、ひらがなで「はっぴいえんど」と書けば、貴方は何を連想する?
僕が想い浮かべるのは、1970年代の伝説の和製ロックバンド「はっぴいえんど」しかない。「日本語はロックにならない」という既成概念を初めて覆した4人のロッカーたち。活動期間はわずか2年余と実に短く、それ故に、今なお伝説のバンドとして根強い人気を保っている。
「はっぴいえんど」が偉大なのは、日本の音楽シーンに残した功績だけではない。解散後の4人の活躍、そして30年以上経った後も、4人が若いミュージシャンに与え続けるさまざまな影響など数え切れない。
メンバーは、細野晴臣(ベース、1947年生まれ)、大瀧詠一(ギター、1948年生まれ)、鈴木茂(ギター、1951年生まれ)、松本隆(ドラムス、1949年生まれ)。4人は作詞、作曲も自分たちでこなした。そして、洋楽のコピーから脱した彼らの斬新な音楽を聴いて、次世代のミュージシャンが育っていった。
はっぴいえんどの影響を受けて、和製ポップ・ロックの道を究めていったミュージシャンは、例えば、山下達郎、矢野顕子、大貫妙子、竹内まりや、松任谷由実、山下久美子…。他にも挙げきれないほど(写真右=はっぴいえんど。左から細野、大瀧、鈴木、松本。長髪が時代を映します)。
1970年8月のデビュー・アルバム「はっぴいえんど」(写真左上)は衝撃的だった。それまで日本のロック・ミュージシャンは、横文字(英語)の歌詞でしか歌わなかった。日本語は歌謡曲、演歌かフォーク・ソングのものというのが一般的な認識だった。そのロックのリズム、メロディーを日本語に載せて、はっぴいえんどは歌った。
一部の専門家からは高い評価を受けた。しかし、彼らの音楽が一般的な支持を得るほど、まだ日本の聴衆は成熟していなかった。翌年の1971年11月に出したセカンド・アルバム「風街ろまん」(写真左下)も、さらに高い評価を受けた。このアルバムからは「風をあつめて」「抱きしめたい」などのヒット曲も生まれた(「風をあつめて」はCMで使われたり、玲葉奈という女性歌手が数年前、カバーしてちょっと話題になった)。
しかし、それでも大衆的な人気というまでには至らず、73年2月、3枚目のやや実験的なアルバム「HAPPY END」(写真右下)を出して、バンドは解散する。この最後のオリジナル・アルバムは、米国の有名なプロデューサー、ヴァン・ダイク・パークスを迎えて製作され、ロック・ミュージシャンの間では評価が高い内容だったが、セールス的には成功とは言えなかった。
僕は、生はっぴいえんどを一度だけ聴く機会があった。1972年4月7日、今はなき大阪・高島屋ホール。「風街ろまん」を出して間もない頃で、コンサートでも「風街…」からの曲が中心だったが、大好きな「12月の雨の日」も演奏してくれた。バンドとして最も充実していた時期のはっぴいえんどが聴けたのは、幸運だったと言うしかない。
バンド解散後、細野はしばらくソロ活動をしていたが、78年、坂本龍一、高橋幸宏と組んでYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)を結成、テクノとロックとポップスを融合させたような斬新な音楽で、世界的にも成功をおさめた。そして現在でも、プロデューサーとして、日本のポップ音楽のご意見番として活躍している。
大瀧はソロ活動と平行して、CMソング(三ツ矢サイダーなど)も数多く手がけ、他のミュージシャンにもさまざまな曲を提供した(松田聖子の「風立ちぬ」、ラッツ&スターの「夢で逢えたら」等々。森進一に「冬のリビエラ」を歌わせた時はびっくりしたけれど…)。
松本は、解散後は作詞家として独り立ちし、松田聖子、太田裕美、アグネスチャンらに詞を提供。数々の賞も獲り、今なお売れっ子作詞家の1人である。唯一、鈴木だけは主にソロ活動を貫き、その後大きく脚光を浴びることはなかったが、75年に出したソロ・アルバム「バンド・ワゴン」は、専門家だけでなく一般のロックファンからも高い評価を受けた。
はっぴいえんどは1985年に、国立競技場で一夜限りの再結成コンサートを開いた(ついこの間のことのような気もするが、もう20年も前か…。一応、ライブ・アルバムにもなってます)。ゲストにはユーミンら彼らを慕うミュージシャンが数多く集まった。
解散の原因はけんか別れでもなく、元々違っていた4人の音楽性が、3枚のアルバムづくりで煮詰まってしまっただけ。4人とも今も仲がいい。60代にさしかかろうとする彼らが今集まれば、どんな音を紡いでくれるかとても興味深い。だれか仕掛けてほしいなぁ。はっぴいえんどの32年ぶり、4枚目の「スタジオ録音アルバム」を…。 |
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うらんかんろ
大阪・北新地のオーセンティック・バー「Bar UK」の公式HPです。お酒&カクテル、Bar、そして洋楽(JazzやRock)とピアノ演奏が大好きなマスターのBlogも兼ねて、様々な情報を発信しています。
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