テーマ:Jazz(1961)
カテゴリ:音楽
家で深夜、独りで静かに飲みたい時は誰にでもある。夜はすべての苦しみを癒し、酒はすべての悩みを一瞬忘れさせてくれる。そんな夜に、貴方は何を飲みながら、どんな音楽を聴くのだろうか?
僕なら、まず迷わずジャズを聴く。それもジャズ・ピアノの演奏が多い。できればトリオで、そしてバラードのような、スローなゆったりとした演奏がいい。ピアノ・トリオの次には、サックスの入ったクァルテットも、好きで、よく聴いている。 ピアノ・バラードが一番好きな僕は、ジャズと言えば、昔はほとんどピアノ・トリオばかりを聴いてきた。管楽器をやっている人には申し訳ないのだが、トランペットの、あの甲高い音をメインにしたジャズは苦手だ。だから、ファンには怒られるかもしれないが、マイルスのレコードはほとんど持っていない。 そんな僕だけれど、管楽器でもサキソフォーンの入ったはジャズも、結構聴く。レコードも何枚か持っている。有名なソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」などは愛聴盤だ。でも、僕が一番好きなのはやはり、ジョン・コルトレーン(写真左上=コルトレーンのアルバムで最も人気があり、僕もやはり一番好きなのは1962年発表の、この「バラード」。聴けば心がとろけます)。 コルトレーンと言えば、わずか12年間のプロ活動の間に、創造的なジャズを作り上げ、歴史に残る数々の名盤を残した巨人。ジャズを志したミュージシャンで、自分の演奏する楽器が何であれ、コルトレーンに畏敬の念を払わない人はいないだろう。 1926年9月、米国ノース・カロライナ州ハムレットに生まれた彼は、高校時代からバンドを始め、後にフィラデルフィアに移住後、プロ楽団のサックス奏者になる。その後50年代半ばにマイルス・デイビスに認められ、彼のクインテットのメンバーになった。 マイルスのバンドで音楽的にも大きく成長したコルトレーンは、バンドの脱退・再加入を繰り返しながら、基本的にはソロ活動の中で、自ら理想とするジャズを築きあげていく。コルトレーンの革新性は、独特の音階(スケール)によるアドリブ・フレーズ、そして、まるで神が乗り移ったようなテンポの演奏(写真左下=コルトレーンのもう一つの代表作「Blue Train」=57年発表)。 それまでのジャズでは、どちらかと言えば、脇役っぽい感じだったサキソフォーンという楽器を、一躍主役に立たせた功績は計り知れない。加えて言えば、ソプラノ・サックスという、それまでジャズ奏者がほとんど使わなかった楽器を積極的に取りあげたことも特筆されるだろう。 アルバム「バラード」の1曲目で、テナーで吹いた代表曲「Say It」はもう、涙が出るほど美しいが、ミュージカルの名曲をアレンジした「My Favorite Things」も、彼のソプラノ・サックスなくしてはあり得ない素晴らしい演奏だ(写真右上=「My Favorite Things」の収録されている同名タイトルのアルバム=60年発表)。 残念ながら、コルトレーンは1967年7月、肝臓病のため40歳の若さで世を去った。晩年(?)の彼は、インド音楽に興味を示したり、即興演奏中心のフリー・ジャズにも傾倒するなど、常に時代の一歩先を行ったミュージシャンだった(写真右下=ジョニー・ハートマンのボーカルとのコラボで録音した「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」は、その後、ジャズの歴史に残る演奏となった=63年発表)。 コルトレーンのことを「20年か30年くらい、早く生まれ過ぎた天才」と評した音楽評論家がいたが、全力で走り過ぎて、そして早く逝きすぎてしまった天才だと、僕も思う。悔やまれぬのは生前の彼の生演奏が聴けなかったこと(今さら言ってもどうしようもないが…)。 僕が大人になった頃、コルトレーンはもうこの世にいなかった。21世紀の今、僕は、彼の残した素晴らしい伝説(演奏)を聴き、その音楽的な革新性に驚き、ただ至上の幸福を感じるしかない。 人気ブログランキングへGO!→【人気ブログランキング】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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