カテゴリ:音楽
70年代初め、日本に米ウエストコースト・ロックを伝えた「アサイラム」というレコード会社があった(今も存続しているのかな?)。ジャクソン・ブラウン、イーグルスらアサイラムが紹介したアーチストで、その後ビッグになった人(人たち)は多い。
そのアサイラムが同じころ売り出したアーチストにトム・ウェイツ(Tom Waits)という男がいた。ギターも弾くが、主にピアノで弾き語るシンガー・ソングライター。だが、日本で彼の歌を聴くには輸入盤を手に入れるしかなかった。 輸入盤と言っても、今と違って2700円~3000円くらいした時代。しかも試聴を簡単にさせてくれる輸入レコード店などなかった。アーチストについての情報は、洋楽に詳しい友人か、レコード店の店長から得るしかなかった。 僕はある友人から「一度聴いてみろよ。面白いから」と教えられ、彼のデビュー・アルバム「クロージング・タイム」(写真左上)を輸入盤で買い求めた(国内盤はまだ発売されていなかった)。 第一印象は、「何だこのしわがれ声は…」というもの。でも、メロディーは素朴で心地よく、歌い方も郷愁を感じる、とてもいい味わい。とくに1曲目の「OL’55」が素晴らしかった。一目惚れという感じで、セカンド・アルバムの「土曜日の夜」(The Heart Of Saturday Night)=写真右=も買い求めた。 ちょうどその頃、75年か76年だったかと記憶しているが、トムが来日した。大阪・厚生年金会館でコンサートをするというので僕は駆けつけた(ただし、大ホールではなく中ホールだったが…)。 ステージ中央にグランドピアノが1台置かれ、記憶では、バック・バンドはウッド・ベースとドラムスの2人だけというシンプルな音づくり。バックはいたけれど、ほとんどはトム一人の弾き語りだったように思う。でも、心地よくて、味わいのある、いいコンサートだった。 トムはMCもほとんどなく、淡々と歌い続けていく。ヘビー・スモーカーのトムはステージ上でも煙草をプカプカ(今なら問題になるだろう)。トムはもちろん「OL’55」も披露してくれた。興に乗って、一人社交ダンスなんて芸も披露していたなぁ…。 しかし、4枚目のアルバム「スモール・チェインジ(Small Change)」から、トムの音楽性は変化し始める。音づくりや歌い方はジャズっぽくなり、声自体の「しわがれ度」もさらにアップしていった(90年代以降にトムを聴き始めた人が、デビュー盤を聴いたら、同一人物とは思えないくらい驚くだろう)。 さすが、僕はこのトムの変化にはついていけず、その後のトムのアルバムを長い間買うことはなかった。久々に買ったのは、今回、トムのことをブログで触れようと思って、参考に買い求めた初期の頃が中心のベスト・アルバム「USED SONGS:ザ・ベスト・オブ・1973-1980」(写真左)。 久々に聴いたトムだけれど、やはり僕の気持ちは変わらなかった。僕にとっては、「クロージング・タイム」と「土曜日の夜」のトムが、僕にとって一番輝いていたトムだった。 名曲「OL’55」は今もトムの代表曲で、ポップスのスタンダードにもなっている(イーグルスもカバーしている)。僕も弾き語りのレパートリーに入れていて、時々歌う。何度歌ってもいい曲だ。 トムはその後もアルバムを出し続けているようで、2004年にも「Real Gone」というファンクぽいアルバム(写真右)も出した。熱烈な固定ファンは今でもいるようだが、僕にとっては、4枚目以降のトムは別人のようにも見える。 トムはもう25年くらい来日していない。米国内でも、公の場での音楽活動はほとんどしていないという。今年12月で57歳になるトム。ネットでのトムのファンサイトでは「再来日要請署名」なんて活動も行われている。でも、僕はもうトムのライブには行かないだろう。僕にとってのトムはもう「クロージング・タイム」がすべてだから。 こちらもクリックして見てねー!→【人気ブログランキング】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[音楽] カテゴリの最新記事
|
|