◆禁酒法時代の米国内で生まれたと伝えられるカクテル
アヴィエ―ション (Aviation)、バカルディ・カクテル (Bacardi Cocktail)、バーバリー・コースト (Barbary Coast)、ベネット (Bennett)、ブラッディー・サム (Bloody Sam)【注1】 、ブロンクス (Bronx)、シカゴ (Chicago)、クローバー・クラブ (Clover Club)、コロニー (Colony)、
デュボネ・カクテル (Dubonnet Cocktail)、フロリダ (Florida)、ロング・アイランド・アイスティー (Long Island Iced Tea)【注2】 、オレンジ・ブロッサム (Orange Blossom)、アンクル・サム・スペシャル (Uncle Sam Special)
【注1】 ブラッディー・サムのベースであるジンをウオッカに替えたブラッディー・メアリー(Bloody Mary)も「もぐり酒場」で人気があったと伝えられていますが、ブラッディー・メアリー自体は米国生まれではなく、1910年代後半に欧州で誕生したという説もあります。【注2】 禁酒法時代、テネシー州のロングアイランドという地域で誕生したという説が伝わっていますが、「もっと後世に考案された」との異論もあるようです。
◆米国の禁酒法時代に、欧州またはカリブ諸国内で生まれたと言われるカクテル
ルイージ (Luigi)、メアリー・ピックフォード (Mary Pickford)、モンキー・グランド (Monkey Gland)、サイドカー (Sidecar)、ホワイト・レディ (White Lady)
◆禁酒法施行以前に誕生していたと言われる主なカクテル
アドニス (Adonis)、アラスカ (Alaska)、アレクザンダー (Alexander)、アメリカーノ (Americano)、バンブー (Bamboo)、ビジュー・カクテル (Bijou Cocktail)、ブラック・ヴェルヴェット (Black Velvet)、ブルー・ムーン (Blue Moon)、ブルックリン (Brooklyn)、カルーソー (Caruso)、シャンパン・カクテル (Champagne Cocktail)、チャーリー・チャプリン (Charlie Chaplin)、ダイキリ (Daiquiri)、エッグ・ノッグ (Egg Nog)、
フレンチ75 (French 75)、ギブソン (Gibson)、ギムレット (Gimlet)、ジン・フィズ (Gin Fizz)、ジン・リッキー (Gin Rickey)、ジン・トニック (Gin Tonic)、グラスホッパー (Grasshopper)、ホーセズ・ネック (Horse’s Neck)、ホット・バタード・ラム (Hot Buttered Rum)、ジャック・ローズ (Jack Rose)、マンハッタン (Manhattan)、マルチネス・カクテル (Martinez Cocktail)、マティーニ (Martini)、
ミント・ジュレップ (Mint Julep)、モヒート (Mojito)、ニューオーリンズ・ジン・フィズ (New Orleans Gin Fizz)、オールド・ファッションド (Old Fashioned)、オールド・パル (Old Pal)、オリンピック (Olympic)、パリジャン (Parisian)、ピンク・レディ (Pink Lady)、プランターズ・パンチ (Planter’s Punch)、
サゼラック (Sazerac)、シャンディ・ガフ (Shandy Gaff)、シンガポール・スリング (Singapore Sling)、スノーボール (Snowball)、スティンガー (Stinger)、トム&ジェリー (Tom & Jerry)、トム・コリンズ (Tom Collins)、XYZ
(※ただし、ブラック・ヴェルヴェット、ブルー・ムーン、チャーリー・チャプリンについては禁酒法以後の誕生とする説もあります)。
◆追記(おまけ)
サボイ・カクテルブック(The Savoy Cocktail Book 1930年刊)には、その名も「Prohibition(禁酒法)」 というカクテル=写真 =が紹介されていますが、著者ハリー・クラドックのオリジナルかどうかは不明です。
レシピは、プリマス・ジン30ml、リレ・ブラン(「ホワイトワイン」「キナ・ワイン」と表記する文献も)30ml、アプリコット・ブランデー0.5tsp、オレンジ・ジュース1tsp。シェイクしてカクテル・グラスに注ぎ、レモンピールします(日本のカクテルブックでは、佐藤紅霞著「世界コクテール飲物辞典」=1954年刊=で初めて紹介されています)。
◆禁酒法時代について書かれた日本語の参考文献
※ほとんどの本が絶版になっていますが、一部の本はアマゾンなど中古本市場では入手可能です。本稿では前書きでも書いたように、主に1、2、3を参考にしました。しかし、いずれの本もバー(もぐり酒場)については少し紹介しているものの、そこで働く数多くのバーテンダーたちや、飲まれていた酒やカクテルについては残念ながらほとんど触れていません。
1.「禁酒法――『酒のない社会』の実験」 :岡本勝著(講談社新書、1996年刊) →絶版(アマゾンなど中古本市場では入手可能)「高貴な理想」とは裏腹に、もぐり酒場の隆盛、密輸・密造業者の暗躍をもたらした禁酒法とは。華やかな「ジャズ・エイジ」を背景に問う内容。禁酒法時代の米国について日本人学者が著した最も一般的な本。
2.「禁酒法のアメリカ――アル・カポネを英雄にしたアメリカン・ドリーム」 :小田基著(PHP新書、1984年刊) →絶版(中古本市場では入手可能)。シカゴ・ギャングやアル・カポネについて比較的詳しく触れた一般向けの禁酒法解説本。
3.「酒場の時代――1920年代のアメリカ風俗」 :常盤新平(サントリー博物館文庫、1981年刊) →絶版(中古市場では入手可能か)。禁酒法時代のアメリカ国内の酒場や風俗、文化、そして国民の倫理感がどう変わっていったかを綴る。
4.「禁酒法と民主主義――道徳と政治と社会」 :板倉聖宣著(仮説社、1983年刊) →絶版(中古本市場では入手可能)。内容の詳細不明だが、やや学術的、専門的な内容か。
5.「アメリカ禁酒運動の軌跡――植民地時代から全国禁酒法まで」 :岡本勝著(ミネルウ゛ァ書房、1994年刊) →絶版(中古本市場では入手可能)。内容は「なぜアメリカ人は、憲法を修正してまで『禁酒』にこだわったのか、『禁酒法』とは、彼らにとっていかなる意味をもっていたのか…植民地時代から1920年代までを、禁酒運動を通じて解説する、アメリカ社会史」とのこと。学術的な研究書。
6.「アメリカ黄金時代――禁酒法とジャズ・エイジ」 :常磐新平(新書館、1972年刊) →絶版(中古本市場では入手可能)。内容はまだ見ていないが、著者が作家・エッセスト、翻訳家として有名な常磐氏であることから、一般向けに書かれた本か。
7.「狂乱の1920年代――禁酒法とジャズ・エイジ」 :大原寿人著(早川書房刊、1964年刊) →絶版(中古本市場では入手可能)。内容の詳細不明。
◆禁酒法時代について書かれた主な英米の参考文献
(英米では当然ながら、下記以外にもたくさんの「禁酒法」関連書物が出版されています→Wikipedia「禁酒法」の解説末尾の注をご参照)
1.Alcohol Consumption During Prohibition/ Jeffrey A. Miron & Jeffrey Zwiebel(1991)
2.Law, Alcohol and Order:Perspectives on National Prohibition/ David E. Kyvig(1985)
3. The History of Alcohol and Drugs Use in the United States,1800-2000/ Sarah W. Tracy & Caroline Jean Acker(2004)
4. Profits, Power and Prohibition:Alcohol Reform and the Industrializing of America,1800-1930/ John J. Rumbarger(1989)
5. Prohibition:Thirteen Years That Changed America/ Edward Behr(1996)
6. The Spirits of America:A Social History of Alcohol/ Eric Burns(2003)
7. The Speakeasies of 1932/ Gordon Kahn & Al Hirschfeld(2003)
8. Dry Manhattan:Prohibition in New York City/ Micheal A. Lerner(2007)
9.Domesticating Drink:Women, Men and Alcohol in America, 1870-1940/ Catherine G. Murdoch(1998)
10. The Rise And Fall Of Prohibition/ John Kobler(1993)
◆禁酒法前後のカクテルを紹介した主な英米のカクテルブック ※1、3、4、7、8はおすすめ!(本稿作成にあたっても参考にしました)。5(絶版か?)以外はいずれもアマゾン等で入手可能です。
1.Vintage Spirits and Forgotten Cocktails:100 Rediscovered Recipes and the Stories behind them / Ted Haigh (2009年)
2.173 Prohibition Cocktails/ Tom Bullock & D.J. Frienz (2001年)
3.Classic Cocktails of Prohibition Era: 100 Classic Cocktail Recipes/ Philip Collins(1997年)
4.Speakeasy :the Employee Only Guide To Classic Cocktail Reimagined/Jason Kosmos & Dushan Zanic(2010年)
5.151 Classic Cocktails:Prohibition Era 19th Century Drinks/ 著者不明(2005年)=絶版か
6.The Classic 1000 Cocktails/ Robert Cross(2003年)
7.173 Pre-Prohibition Cocktails/ Tom Bullock(原著1917年 復刻版2001年)
8.Vintage Cocktails/ Susan Waggoner & Robert Markel(1999年)
「禁酒法時代の米国--酒と酒場と庶民のストーリー」 は今回でもって終了します。ご愛読有難うございました。ご感想、ご意見、ご情報等をお待ちしております。
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2021/05/30 10:37:13 AM
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うらんかんろ
大阪・北新地のオーセンティック・バー「Bar UK」の公式HPです。お酒&カクテル、Bar、そして洋楽(JazzやRock)とピアノ演奏が大好きなマスターのBlogも兼ねて、様々な情報を発信しています。
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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。 ▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。▼コロナ禍の家飲みには、Bar UKのハウス・ウイスキーでもあるDewar's White Labelはいかが?ハイボールに最も相性が良いウイスキーですよ。▼ワンランク上の家飲みはいかが? Bar UKのおすすめは、”アイラの女王”ボウモア(Bowmore)です。バランスの良さに定評がある、スモーキーなモルト。ぜひストレートかロックでゆっくりと味わってみてください。クールダウンのチェイサー(水)もお忘れなく…。