テーマ:海外生活(7774)
カテゴリ:エクアドル人のおっとを持つと
「タスケテ、タスケテ~!!」
「シニョーラ、いったいどうなさったんですかっ!?」 「ナイ、ナイ!!クルマ!!!」 この会話は本当ならば今日である2年目の結婚記念日を日曜日に振り替えて、久しぶりに映画を見に行こうと、支度していた中のことだ。 おっとが洗面所に行ったときのわずかの間におっとの携帯にかかってきたものだった。 なにげなく、わたしは受話器を取って、この女性の声の動揺ぶりに、わたしもすっかり動揺してしまったのである。 しかし、すぐにわたしは我に返って携帯の番号を確かめる。「ノーナンバー」。どうやら公衆電話からみたいだ。 そしてこのたどたどしいイタリア語と、ガイジンなまりは聞きなれた南米人のものでも、日本人のものでもない。 わたし「あの~、おかけ間違いじゃないですか?」 女性「ワタシ、マルちゃんさんのトモダチ!」 ああ。 ちょうどそこにおっとが出てきたので代わった。 おっとはしきりに「どこにクルマを停めたんです?」と質問を繰り返している。 うんうん、とうなずき、「そこはね、停めたらダメなんです。きっとレッカー移動されたので、管轄の交通警察に探しに行かないと。。。」 おっと「だから、管轄の交通警察です。番号はイエローページで探しなさい。え?いや、だから残念ですが、これ以上は力になれないですって!」と5回ほど繰り返した後、電話を切った。 わたし「。。。誰だったの?」 おっと「◎◎さん(おっとが雇うと言った我慢がならない国のひと)の奥さん。どうやら彼、友達の友達に借りたクルマを家の近くの駐車場の門の前に放置してレッカーされたみたいなんだよ。 だから管轄の交通警察に行け、って言ったら滞在許可証がないからだと思うけど、イヤだっていうし、挙句の果てには雇用主が責任を持って取りにいけ、なんてこと言われたんだよ。まだ彼をはっきり雇う、とも言ってないし、そのクルマはぼくのものでもないのに。」 わたし「ほらね、言わんこっちゃない。」 おっと「とにかく、あのひとはNGだな。最低でもイタリア語でコミュニケーションが出来て、あの国は知らないけど、イタリアの交通ルールが守れるひとじゃないと。。。」 わたしはこの言葉がおっと自ら出たのを聞いてホッとした。 ん?あのひと、奥さんは祖国に置いてきたんじゃなかったっけ。。。?(もうどうでもいいや。) *** 記念日の出鼻がくじかれたような形でわたしたちはクルマで外に出た。 はじめはしとしとと小雨が降っていたのが豪雨に変わる。 2年前の結婚式の日はあんなに穏やかだったのに。。。 クルマの中でこの2年間を振り返った。 たった2年なのに、ずいぶん長い年月が経ったように感じられる。 結婚直後は我が両親同伴、向こうの実家を訪ねるという、辛いエクアドル旅行。 その後は、滞在許可証で苦労したよな。1年近くも手続きに時間がかかって、危うく去年の日本行きのチケットがフイになる、ぎりぎりで手に入れたんだっけ。。。 その日本に行く時もおっとのルーズさで仕事の調整がつかなくなって、結局バラバラで飛び立ったんだよな~。 日本から帰ったらすぐに家を見つけて、購入してからというもの、今の問題を抱えまくってるし。。。 なんか結婚してからは問題だらけだ! しかしこんな中、おっとは劇的に変わったと思う。 以前はただのちゃらんぽらんのお人よしだったが、現在はつたないながらも、ずいぶんと責任感が出てきた。 わたしも変わった。 以前は夢見るお嬢様で、深く物事を考えたことは数えるほどしかなかったが、結婚してからと言うもの、現実の厳しさに目覚め、というか、いやおうなく「現実」にいつ終わるかわからないパンチを顔面に受け続けている。 そのため、ずいぶんぺシミスタになったと思う。(←これって単に性格が悪くなっただけ?) しかしこんな様子でいつまで結婚生活が続くんだろう?と記念日にしてとても心配になってしまい、深いため息をついたのだった。 映画館に着いた。 入館するとすぐ、その日上映される映画の数々のポスターが貼られているのが見えた。 おっとは「あ、シンデレラマンがいいな。」とひとつのポスターを指した。 しかし、わたしはすでに別のポスターに目が釘付けになっていたのである! 宮崎駿の「ハウルの動く城」。 日本ではもうすぐDVDが発売になるようだが、ここイタリアでは先週封切りになったのだ。 オタクなわたしとしてはどうしても見たい。我慢が出来ない! しかしおっとは「君の観るアニメ、みんな同じじゃない。イヤだよ!」(←なぜなら宮崎駿作品ばかり持っているから。) わたし「あ、じゃあこうしない?あんたは「シンデレラマン」を観て、わたしはこれを観るの。上映が終わったらポップコーン売り場の前で待ち合わせね!」(←これがわたしが「冷血」だと言われる由縁。) おっと「結婚記念日だってのに。。。。わかったよ、君が観たい映画を観よう。」としぶしぶ折れたのであった。 映画が始まった。 おっとは最初から興味がないのでぽりぽりポップコーンをかじりだす。その音がわたしにとって耳障りである。そして誰かから電話があったみたいで、しきりに携帯を覗き込んでいる。 わたしはというと、やっぱり強引にこの映画に決めてしまった後ろめたさがあってか、映画に入り込めない。 と、いうかやっぱり今までの宮崎駿の作品と違って、あんまりおもしろくなかった。 今までの上映作品のいいところだけをミックスして練り上げた、甘ったるい少女漫画みたい。 ここまでして観たのに。。。と終わった後に妙な後悔がお腹の底に残ったのであった。 出口でおっとを見ると、もう携帯で誰かと話している。しかしすぐに切って「あのさあ、ウイリアムが夕食に招待してくれたんだけど、行かない?」と聞いてきた。 あ~あ、まただよ。いつものことだ。 しかし今日は。。。 わたし「あんたはどうしたいの?今日は結婚記念日でしょ?」と相手の動きを見る。 おっと「行こうよ!セビチェ(エクアドルの魚介のスープ)を作るんだって。君、好きだろ?」 わたしはため息をついた。おっとの答えはわかっていたはずだ。我が家でけじめがある、記念日なんて出来るはずないんだ。 こうしてわたしたちはウイリアムの家に行き、彼の親族一同でだらだらとビールを飲み、だらだらといつものように酔っ払ってフラフラと夜中に家に帰り着いたのであった。(←まだ翌朝までに家に帰れただけマシ。) ううう、3年目はもうちょっとマシな過ごし方をしたい。。。。。。(って3年目があるのだろうか?) *** 写真サービスは本日を持って終了!(だって恥ずかしいし。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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