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カテゴリ:生命科学
天然変性タンパク質が若手の研究者のテーマとしてふさわしい7つの理由 生物物理のシンポジウムのオーガナイズの席で、つたない英語でconcluding remarkとしていいたかったこと。 若手生化学者・タンパク質科学者・構造生物学者諸君! 天然変性タンパク質の研究をしよう!がんがんしよう! なぜなら、天然変性タンパク質の研究は、若手がこの業界に参入するのにふさわしいすばらしい七つの理由があるからなのである、なんちって♪。ついでなんで、いい気になってこの7つの理由を以下に列記する。 1.新しい概念で、一部はいまだ未定・不定で、かつ不完全な学問分野である。従って、新たな視点で参入してくるフレッシュな若手が大ブレークしうる余地がふんだんにある学問分野である。なぜなら、これから新しいことがばんばん出てくる研究分野なのだ。 2.それと関連しているかもしれないが、天然変性タンパク質の学問領域では、まだノーベル賞が出ていない。Anfinzenをのぞけばprotein folding研究の分野でもノーベル賞は出ていない。出ていないということは、これから出るかもしれないということで、Poyotaの予測では10年以内。なので、既にノーベル賞が出てしまった分野で「守勢」に入るよりも、精神衛生上よいかもしれない。 3.いろいろな分野からの切口がある、つまり「なんでもあり」の状況である。生化学・分子生物学・構造生物学・分光学・生物物理化学・フォールディング・プロテインエンジニアリング・バイオインフォマティクス・シミュレーション・プロテオミクス・システムスバイオロジー・シンセティックバイオロジー。自分の得意分野を切口に参入しやすいというのは、若い人に特によいかもしれない。 4.いろいろな分野の人が参入してくるので、いろいろな(専門外の)分野の勉強ができる。たとえば、変性状態を理解するためには、タンパク質構造や熱力学を勉強しなければならない。リンカー予測を理解するには、ドメインを理解しなければならない。天然変性タンパク質は、「図と地」の関係で一般的なタンパク質科学の全てを内報しうる。たくさん学ぶことがあるなんて、素晴らしいことじゃないか。 5.同じく、いろいろな分野の人が参入してくるので、様々な自分の専門以外の分野の研究者に共同研究者が増やせるかもしれない。今日びの最先端科学は、「自分だけでなんとかなる」「自分の出身ラボの関係者だけでノウハウを独占してトップを独走できる」なんてわけには、そう簡単にはいかない。日本の研究者は「草の根」的共同研究が苦手かもしれないが、天然変性研究ならそれができる!(かもしれない。) 6.そんなわけで、天然変性タンパク質の学問分野は、刺激的である。わが国における学究のイメージは、「沈思黙考孤高の深化研究(悪くいえばタコツボ)」であるが、欧米において、科学の本質はディスカッションである、といってもよい。若い分野に参入してきた若い才能たちが、活発に議論をかわす、そんな光景が、生物物理学会(今回)に限らず、天然変性関連の学会やセッションで何回も見られている。それはあたりまえで、健全で、そして貴重なことだ。 7.しかも天然変性タンパク質の研究内容は、タンパク質科学に興味を持っていない『いっぱんのひと』には、その魅力を極めて説明しにくい。まったく説明できないといっても過言ではない。昨今、予算獲得のためやら事業仕分けのせいやらで、科学者の研究成果や重要性を『いっぱんのひと』に説明する必要性と責任が日に日に増大している。科学コミュニケーションは21世紀を科学者が生き残るための必須のスキルなので、天然変性タンパク質研究者は、得がたい経験ができるであろう。 そんなわけで、天然変性タンパク質の研究は、当分おもしろいのだ。 ブログ村で天然変性蛋白質のブログを探してみる お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.10.12 12:01:04
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