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耳(ミミ)とチャッピの布団

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Jul 4, 2018
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カテゴリ:カテゴリ未分類
ランビキと云う蒸留器をご存じでしょうか?
ランビキは江戸時代に薬油や酒類などを蒸留するのに用いた器具です。

もともとは9世紀のイスラム帝国、宮廷学者ジャービル・イブン=ハイヤーンが発明したとされるアランビック蒸留器です。
三段重ねの構造になっていて、最下段は抽出原料と水を入れて加熱する「加熱槽」です。
ここから水蒸気と共に上昇する精油成分が、冷水が入っている最上段の「冷却槽」の底で冷やされ、「露」として中段の「回収槽」の樋に溜まります。
溜まった「露」は管を通ってフラスコなどの容器に流れ込む構造なんですな。

この方法を「熱水蒸留法」と云い、エッセンシャルオイルなんかもこの方法で抽出されることがあります。
この蒸留法を用いて、焼酎も作られてます。
ランビキと同じ原理で、精油の代わりに、焼酎を精製するワケです。

福岡県のゑびす酒造が出している「らんびき」というネーミングの焼酎があります。
「らんびき」=「ランビキ」
まさに、熱水蒸留法で製造した焼酎です。


この熱水蒸留法、すなわちカブト釜式蒸留の最大の特徴と云うか欠点は、その効率の悪さです。
カブト釜式蒸留は、江戸時代から明治頃まで用いられていた伝統的な蒸留法ですが、蒸留に大変な時間と手間のかかる原始的な製法なんですな。

なので現代は極めて希少な焼酎の製法になっています。
その代り、香味豊かな、他では味わうことのできない個性のある美味しい焼酎に仕上がるのが特徴です。


鹿児島に錦灘酒造と云う有名な蔵元があります。
もともと錦灘酒造は、焼酎の原料となる「麹菌(こうじきん)」を全国の酒造メーカーに卸す麹屋さんでした。
今の社長の祖父、河内源一郎は「麹の神さま」「近代焼酎の父」と呼ばれ、日本の焼酎文化の土台を築いた人です。

明治年間に、沖縄の泡盛製造に使う黒麹菌から白麹菌「河内菌」の分離培養に成功。
これによって、良質で美味しい焼酎造りが可能になったのです。
現在、日本で製造されてる焼酎の実に8割が、この河内菌で作られています。
その河内源一郎が残した記録とレシピをもとにカブト釜式蒸留器=「チンタラ蒸留器」を製造して、範たる焼酎の製造に臨みました。

チンタラ蒸留器は、1日かけてせいぜい1升瓶1本の焼酎しか製造できません。
ここで製造される最高級芋焼酎「チンタラリ」は、それをさらに甕壺の中で10年熟成させます。

現在、「チンタラリ」は1本16,200円もします。
同じ鹿児島でも、薩摩金山のあった串木野と云うところに、本格芋焼酎「海童」で知られる濵田酒造があります。
なぜ、金山で焼酎なのかと云うと、金山の坑内の温度が18度前後と一定であることと、紫外線が入り込まないこと、そして振動が少ないからです。
まさに焼酎造りに適した条件が全部揃っているからです。

ここでも、チンタラ蒸留器を復活させて、昔ながらの焼酎を仕込んでいます。
しかも、杜氏は全員、若い女性ばかり。

それは、かつて焼酎も味噌や醤油と同じように自家製が当たり前の時代があったからです。
それらは女性の仕事でした。
明治以前の焼酎造りをコンセプトにしているので、この濵田酒造では杜氏を全員女性にしているのです。




ところで「カブト釜式蒸留器」を「チンタラ蒸留器」と称してきましたが、これは鹿児島独特のネーミングです。
鹿児島弁で「チンチン」は「ゆっくり」「少しずつ」と云う意味です。

「チンチンやれ!」は「あせるな!」。
「チンチン飲まなアカンぞ!」は「ゆっくり味わって飲め!」ってことです。

チンタラ蒸留器の場合、あせって加熱すると焼酎が焦げ臭くなってしまいます。
だから、あせらず、チンチンゆっくり作業して、少しずつタラタラ滴り落ちるのを待つ。

そこから、やる気を感じさせないほどのんびりしているさまを「ちんたら」と云うようになったのです。





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Last updated  Jul 4, 2018 04:42:55 AM
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