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釈迦楽

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January 7, 2018
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カテゴリ:教授の読書日記
正月早々、あんまり縁起のいいタイトルじゃないですけど、エリザベス・キューブラー・ロスという人の書いた『死ぬ瞬間 死とその過程について』(原題: On Death and Dying)という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。

 私がエリザベス・キューブラー・ロスの名前を聞いたのは、ジェラルド・G・ジャンポルスキーの『愛とは怖れを手ばなすこと』という本を読んだ時に、「ACIM」というニューエイジ系の一連の自己啓発本の存在に気付き、その系統のライターの一人にロスの名前が挙がっていたことがきっかけだったので、当然、私はロスというのはニューエイジ系の人だと思っていたわけ。

 で、その人の本のタイトルが『死ぬ瞬間』でしょ。これはもう、人間が死ぬと、その死者の目の前にどういう風景が現われるのか、どんなお迎えがやってきて、どんな天国に迎え入れられるのか・・・みたいな話が展開するのかと思うじゃん?

 全然違いました。

 この本は、もう、ガチの真面目な本でした。(まあ、ニューエイジ系の著者がふざけているとは言いませんが・・・)

 エリザベス・キューブラー・ロスという人は、スイス・チューリヒの生れで、ユングと同郷というか、実際、チューリヒで医学生をしていた時にはユングの姿をよく見かけたそうですけれども、当時、スイスはヨーロッパの中では辺境も辺境、ど田舎もど田舎、近代科学と無縁の場所だったらしいんですな。だから人が死ぬというのも、ごく自然な成り行きと捉えられ、人間的に処理されていた。死にゆく人は、家族に見守られ、家族は死にゆく人から後のことを頼まれて、そうやって尊厳を保ったまま死んでいったと。

 その後、彼女は医者になり、アメリカに渡って近代的な医学に携わるわけですけれども、そうなるともう、死にゆく人に尊厳なんかありゃしない。瀕死の病人はチューブと機械にがんじがらめにされて、清潔だけれども人間味のない壁に囲まれ、医師と看護師からモノのように扱われながら死んでいく。

 これは一体何事だと。死にゆく人をどう扱えばいいのか、もっと考えなきゃいかんのじゃないかと、まあ、ロスは考えるわけですな。

 で、じゃあ、死にゆく人をどう扱えばいいか、それを考えるためには、誰に話を聞けば一番参考になるかと考えた時に、実際に死にかけている人に聞くのが一番いい(に違いない)と、彼女は考えた。

 そこで、シカゴ大学の病院で、もうすぐ死ぬ人たちにインタビューをしようということになったのだけど、ここでロスは激しい抵抗に遭います。

 シカゴ大学病院の医師・看護師たちは、ロスの試みに猛反対するんですな。死にかけている人に、「あんた、もうすぐ死ぬんだけれど、どんな気分?」と尋ねるなんて、なんという非人道的なことか。お前それでも人間か? というわけ。わしの患者に、そんなインタビューをすることは許さん! みたいな。

 だけど、実際にインタビューしてみると、死にかけている患者は、むしろその種のインタビューを歓迎します。彼ら・彼女らは、自分がもうすぐ死ぬことを十分理解していたし、そのことを語ること自体、何ら抵抗がなかった。というか、むしろ医者や見舞いに来る人たちがその話題を避けるために、人生の終わりに言うべきことも言えない、そんな状況に陥って苦しんでいたわけ。それから、末期患者に対する病院の対応ぶりにも不満が多く、その不満をインタビューの中でぶちまけたかったわけね。

 で、ロスの企図に賛同した患者がインタビューに応じ、またそのインタビューから得られる知見に価値があるということが段々明らかになるにつれ、今まで強く反対していた医師の中にも賛同者が現われはじめ、さほど時期をおかずに、末期患者へのインタビューは、医者の卵、すなわち医学生にとっての必須のカリキュラムにもなっていくんです。

 というわけで、この本『死ぬ瞬間』は、そういう末期患者とのインタビューを軸にして、そのインタビューから浮かび上がる末期患者の思いを明らかにし、そういう思いに対処するにはどうすればいいかを考察していく、そんな本になりました。

 ね、ガチでしょ? ここには「来世」だの、「生まれ変わり」だの、そういうニューエイジ的な側面はかけらもございません。

 さて、じゃあ、末期患者のインタビューから何が浮かび上がってきたかと申しますと、人間というのは一般に、自分がもうすぐ死ぬんだとわかった瞬間から、実際に死ぬまでに、5つの過程を踏む、ということでございます。これがこの本を世界的に有名にすることになる「死の五段階」という奴ね。

 具体的にはどういう過程・段階かと言いますと、まず診断を受け、たとえば末期のガンです、みたいなことを医師から伝えられた際、その最初の衝撃を受けた後、患者は「否認」します。そんなわきゃーないだろう、多分、別な患者のカルテと自分のカルテを混同したんじゃないか? 的な。これが第一段階。

 これを通り過ぎると、今度は「怒り」の段階に入ります。「何で俺なんだ、俺は何も悪いことをしていないのに、何で俺が死ななくちゃならないんだ」という怒りがむくむくと。患者が怒っているわけですから、医者も看護士も見舞に訪れる家族もしんどい時期でございます。これが第二段階。

 次、第三段階に入りますと「取り引き」が始まります。これは子供が親に向って取り引きを持ちかけるのと一緒。子供はよく「自分の部屋を掃除するから、午後は遊びに行っていいでしょ?」的な取り引きを親に持ちかけることがありますが、これと同じで、「この病気を治してくれたら、何でもします。一生を奉仕に捧げてもいい」とか、そういうことを考え出す。勿論、神さまに対して。

 しかし、どう取り引きをもちかけようと、自分の病気は良くならないと悟った時、「抑鬱」の段階に入ります。第四段階ですな。これは患者によって様々なパターンがあります。もう自分には未来がなく、やりたいと思っていたことが出来ないのだということを悲しむこともあるし、自分が死んだら、残された家族はどうなる、という思いからの悲しみもある。この状況もまた、医者・看護師・家族にとって対処の難しい時期になります。例えば、この時期の患者に「悲しまないで」と励ますのは、逆に良くない、とかね。むしろ思い切り悲しませてあげた方がいいとか。

 そしてこの時期を通り越すと、今度は「受容」の時期が来ます。これが第五段階。もう患者は自分が死ぬことを受け入れております。だから、この段階では、家族が「死なないでくれ!」と言ったり、「病気がよくなったらどこに行こう」というようなことを言うのは逆効果だったりする。患者本人が死を受け入れ始めているのだから、その意志に沿うように、家族もまた静かにこの運命を受け入れないといけないわけ。尊厳をもって、最後までその人らしく死なせてあげるにはどうすればいいか、ということを考えるべき時に来ております。

 そしてこの第五段階の後、「虚脱」がやって参ります。もう、患者は自分をこの世に結び付けているものを一つずつ切り離していきます。もう友人のお見舞いもいらない、もう子供達のお見舞いもいらない。最後の最後、自分の夫や妻といった、長年連れ添った人が一人居ればいい、的な心境になっている。心境もそうだし、体力もそうなんですな。そして、その一人を最後の絆として、その絆を切り離してあの世に旅立つと。

 とまあ、そんな具合に人間というのは自らの死を準備していくと。
 
 だから、重要なのは、そのそれぞれの段階に応じた対処を、患者の周辺に居る人々は心掛けなけれならないよと。

 なるほどね・・・。納得するけど、重い話題でございます。私ももう少し早くこの本を読んでおけば、死にゆく父の必要にもう少しうまく応えられたのではないかと思うことあり。

 ただ、ロスも強調していますが、どの段階にいる患者――たとえ「受容」期に居る患者ですら――一寸の希望だけは持ち続ける。これはもう最後まで持ち続けると言います。つまり、「ひょっとしたら明日、画期的な治療法・治療薬が開発され、自分は助かるかも知れない」という気持、奇跡を待つ気持だけは持ち続ける。

 だからね、死病に取り憑かれた患者に「もう絶望です」と医師が言っては絶対ダメなのね。それはやってはいけないこと。重要です。

 でもとにかく、近代医学の中で一番忘れられた存在なのは、当の患者なんですな。だから、その患者が、自分の死を前にして何を考えているかを探ったこの本はすごく貴重というか、価値のある試みであったことは確かでしょう。この本が世界的なベストセラー、ロングセラーになったことも頷けます。そういう意味では、この本、医療関係者はもとより、一般人の我々も是非一度通読しておくことが望ましいのではないかと、私も思います。なんとなれば、我々もいつか必ず家族の誰かを送ることになるし、自分自身もまた死の床に臥せる日が必ずやってくるのですから。



「死ぬ瞬間」と死後の生/エリザベス・キューブラー・ロス/鈴木晶【2500円以上送料無料】


 ところで、本書の巻末に訳者・鈴木晶氏の簡潔な解説がついているのですが、それによると、エリザベス・キューブラー・ロスは、この本を書いて一躍有名になった後で、「死後の世界」に興味を抱きだし、後年はそっちに行ってしまったと。それゆえ、この本に感銘を受けた多くの読者を、後年、失うことになり、その代りに「死後の世界」に興味のある人々を新たに読者につけたと。

 なるほど~。このガチの本を書いた後で、ロスはアチラの世界、ニューエイジ方面に旅立たれたわけね。それで、ACIM系ライターに名前が挙がっていたのか・・・。

 色々納得です。

 だから、ニューエイジ系ライターとしてのロスを知りたければ、もっと後年の本を読まなければならないわけですな。また読むべき本が増えたよ・・・。一冊読むと、さらに読むべき本が増えて際限がない。

 ま、それはこっちの話でありまして、『死ぬ瞬間』については、誰が読んでも損のない本と思いますので、教授のおすすめ!です。





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Last updated  January 7, 2018 04:19:00 PM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:クタクタの誕生日(04/09) がいとさんへ  いやいや、あの頃が僕に…
がいと@ Re[2]:クタクタの誕生日(04/09) せんせい おぉ、そんなこともありました…
釈迦楽@ Re[1]:クタクタの誕生日(04/09) がいとさんへ  昔、君が正門前のアパー…
がいと@ Re:クタクタの誕生日(04/09) せんせい その近くです! 魚沼から半分近…
釈迦楽@ Re[1]:クタクタの誕生日(04/09) よびなみさんへ  ありがとうございまー…

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