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カテゴリ:教授の雑感
ちょっと前の話になりますが、高知県立大で図書館の蔵書3万8千冊を焼却処分した、という話、ご覧になりました? 図書館を新設したのはいいけれど、旧図書館の蔵書を全部入れると、その時点で一杯になってしまうので、将来のことを考えてそれだけ焼却処分したというのですが。
これさあ、ははーん、と思うんだよね・・・。 実はうちの大学でも昨年、図書館のリニューアルをしたんですが、やっぱりそれを機に図書の処分をしたわけ。 なんでそういうことになると思います? あのね、図書館は図書を入れる館で、その館が大分手狭になってきたので、リニューアルしていいですか? とか文科省に尋ねるとするでしょ? そうすると「ダメ」っていう返事が来ます。 その代わり、「図書館の中に、コモン・スペース沢山作りますから、リニューアルしていいですか?」って尋ねるとするじゃん? そうすると「いいよ」って返事が来ます。 今、文科省は「コモン・スペース」ってのが大流行りなのよ。これを作るというと、すぐにお金がつくので、校舎もコモン・スペースつき、研究棟もコモン・スペースつき、ってな具合に、国公立大学の建物にやたらにコモン・スペースが出来ております。 じゃあ、コモン・スペースって一体なにか? と申しますと、これがよく分からない。テーブルとか椅子がおいてあるスペースで、何に使ってもいい(けれど、何に使っていいかよく分からない)スペースなんですな。 で、うちの図書館リニューアルに際しても、たーくさんコモン・スペースが出来ました。それだけでなく、撮影機器満載の「特別教室」とかも出来ました。ただ、特別教室は誰も使ってないし、コモン・スペースは学生が冷房の効いた部屋でおしゃべりをするために使っているようです。 で、その分、何が減ったかというと、蔵書スペースが減りました。だから、本を処分することになりましったっていうね。 で、そういうのは、教授会の議を経なくてもいいのね。今、文科省の指導によって、国公立大学はとにかく「学長のリーダーシップ」で何でもやることになっているので、その大学に勤めている教員には何の相談もなく、学長が「処分」って言い出したら、問答無用で処分されちゃう。 つまり、高知県立大のケースとほぼ同じ。だから、このニュース見た時には、私は「ははーん」と思ったわけよ。 うちの大学はさすがに焼却はしないと思いますが、しかし、本末転倒のことをやっているのは同じだよね。図書館の一番大事なものを捨てるわけだから。 しかもね、その処分の仕方が超おバカで、「最近、使われていない資料」から捨てるわけ。 お前ら、アホか! どこをどう押したら「使われない資料=要らない資料」っていう発想が出てくるんだよ! 書店じゃないんだぞ。図書館だぞ。何十年も使われていない資料だから、重要っていうことだってあるかもしらんじゃないの。百年に1回使われるかもしれないから、それを所蔵するってのが、本来、図書館の在るべき姿でしょうが。 とにかく図書館の蔵書処分問題って、日本の教育行政の今のありようを象徴していますな。流行の「コモン・スペース」ありきの、本質的な図書処分っていう。いかに教養のない連中が、教養の中枢を司っているかという。 私なんか、こういうことを「恥ずかしい」と思うけど、官僚は思わないのかな。恥ずかしいと思っていたら、自分の息子を裏口入学させるようなことするわけないか! さてさて、2週間弱の実家での夏休みも今日で終了。今日はこのあと、夕飯を食べてから名古屋に戻ります。明日からはまた、通常通りの名古屋からの配信。それはそれでお楽しみに〜! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 22, 2018 05:24:47 PM
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