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カテゴリ:マンガ
ブックオフの105円コーナーでまとめ買いした「嗚呼! 花の応援団」を一気読みした。
70年代らしいパワーあふれるギャグに、笑いはしないが楽しませてもらった。バロン吉元の「高校四年」も大学時代に偶然手にして最近ようやくネットで全巻揃えたのだが、モラトリアム期にある学生、それも少々落ちこぼれに分類される層というのは、高度経済成長期に置いていかれた都市の裏側の風景とよくマッチする。 「体制/大衆」のコントラストにおいて美しいというか、大都市の吹き溜まりの「ひたむきさ」がよく現れる格好のモチーフだと思うのだ。 私が最も好きな映像作品は(リアルタイムではないが)かの名作「傷だらけの天使」だが、本作もそうした「変わり行く日本の景色」を絶妙に捉えた作品という点で評価している。まぁ一般的な見どころはショーケン扮する「オサムちゃん」のかっこよさと、彼を「兄貴」と慕うアキラ(水谷豊)のひたむきさなのだが、都心のマンションで優雅に暮らす「中の上」のような人々と、農村や団地でつつましく暮らす人、あるいは場末の飲み屋のママなど「中流って何?」みたいな人や風景が映像資料としても貴重だ。 さて、二度映画化された「嗚呼 花の応援団」だが、作者は本作で有名になった「どおくまん」だ。「どおくまん(独漫)」をリーダーとする大阪芸大で結成された四人によるユニットで、今で言えば「CLAMP」のような感じなのだろう。 予断ではあるが掲載誌である「漫画アクション」ウィキペディアによると出版史上初の青年誌だそうで、当時は「少年マガジン」を卒業した若者の心を掴んだことだろう。かつての連載作品を見ると、「どれか好みの作品があるだろう」といわんばかりに、後に「スピリッツ」「ヤングマガジン」など細分化されていくマンガのジャンルがごった煮のように詰め込まれていて、そのカオスぶりに驚くばかりである。 「文化は『いびつ』な時が一番面白い」と語っていたのはファッション誌「Asayan」でのスチャダラパーの言葉だっただろうか。とにかく、絵も洗練されていなければストーリーも予定調和的だし、そもそも「作者は本当に大学に通っていたのか」と言いたくなるような「大学らしくない」描写(応援団の理不尽な実態はよく捉えているようだが)に当時の作家、および読者の現状を感じつつも、それを補ってなお余りある底力にただ感服するばかりである。 「落ちこぼれ」という言葉が死語(この言葉自体が「死語」?)となった今(大学全入時代ですから)、誰もが「そこそこに」を望みながらその一部は「下流」へと流れ、諦めと停滞のムードが支配する現代である。ギャグマンガは「シュール」「ナンセンス」が主流であるが、こうした「何だかよく分からないけど面白い」作品、それも「(単に時事ネタでない)時代の空気を背景に感じさせる」作品が出てくるともっといいな、と思った。 ♂バイオレンス・ギャグ/ぶんか社◆なにわ遊侠伝【1-24巻】/どおくまん お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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