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カテゴリ:ばくばく冒険小説
本屋大賞を受賞した和田竜の歴史冒険小説の下巻を読んだ。
○ストーリー 毛利家に乞われ,村上水軍は大阪に立て籠もる本願寺一向宗に糧食を届けるために,大艦隊を繰り出す。だが木津川の河口は,織田側の泉州水軍が大型船を並べ封鎖をしていた。瀬戸内の村上氏と先週の眞鍋氏,2つの水軍が正面からぶつかる。その中で,村上海賊の娘・景は? ------------ 勢いのある作品だった。上巻を用いて織田勢と毛利勢の多くの武将を丁寧に描いているので,木津川口の戦いにおけるそれぞれの戦いや行動に思い入れが乗る。2つの軍勢が正面からぶつかっているのに,その両方を応援してしまうという不思議な気持ちを抱きつつ,最後まで読み進んだ。 いろいろと新しいスタイルを取り入れているが,海を舞台にした歴史絵巻として立派に成立している。読み終えて,大きな満足感を覚えた。 ------------ 待ち構える眞鍋の水軍に対して,村上三水軍が鶴翼の陣で襲いかかる。安宅(あたか)と呼ばれる眞鍋の巨大な軍船に対し,能島村上の元吉・景親2兄弟の2艘の関船で足止めを図る。 したたかな因島村上の吉充,豪放な来島村上の吉継。彼らを支援する毛利の武将たち。 彼らを待ち構えるのは,巨人・眞鍋七五三兵衛,泉州の頭領・沼間義晴。さらにここに食えない松浦安太夫,寺田又右衛門なども加わる。 豪放でありながら,どこか飄々さばさばとした戦。これまでの和田竜の作品にはなかった大合戦の描写であり,ひじょうに読み応えがあった。 ------------ この作品にはクセがあり,多くの批判がある。 主人公の女海賊・景が,歴史を動かし大活躍をしてしまうというラノベ的展開には,どうしても不自然さを感じてしまう。 戦いに参加する武将と兵たちが饒舌で,べらべら会話・ののしり・軽口を言い合いながら斬り合うのは,大河ドラマなどで観る現代的な寡黙な戦とは別物だった。比喩が古くて恐縮だが田河水泡の「のらくろ」や手塚治虫のマンガを思い出してしまった。 状況をにらみつつ,平然と寝返る武将たちのドライさにも呆れてしまった。さすがにこの軽さでは,組織としての結束力にも問題が出ると思う。 僕自身もこうした欠点は感じたし,共感した。けれどもそれらをすべて超える物語としてのチカラは間違いなく感じた。感動や細かいリアリティなどを捨てて,勢いとキャラクターの魅力を会得している気がする。 ------------ 中盤,主人公・景はある挫折を体験し,分かりやすく落ち込む。終盤は,いかにして彼女が再起をするのか?それにより何が起きるか?という期待感と驚きをもって物語は進む。 主人公の挫折と再起。冒険小説の鉄則だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.10.02 12:14:29
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